第189号黒岩検閲済 2026年6月20日 発行(不定期刊/前号:6月20日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|無料診断の型

「あなたに合う副業が無料で分かる」診断の型を、お金の流れで調べた

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黒岩警戒度

「10秒のアンケートで、あなたに合うスマホ副業が無料で分かる」。SNSで、かわいいキャラクターを使ったそういう広告が流れてくる。性別を選び、好みを選び、性格を選ぶ。それだけで自分にぴったりの稼ぎ方が見つかる、という触れ込みである。特定の事業者は名指ししない。案件をまたいで繰り返し現れる一つの型として、その「無料診断」を押した先で何が起きるのかを、お金の流れと公的なルールからほどいておきたい。

診断は「選ばせる」が「分けて」はいない

まず、診断そのものを見てみる。設問は二つか三つ。性別、SNSの使い方、性格のタイプ。選択肢は分かれているのに、どれを選んでも案内される先は同じ、という作りになっていることがある。つまり、入力は分かれているが出力は分かれていない。「あなたに合った」と言いながら、実際には全員を同じ出口へ運ぶための入口だった、という構造である。

これは占いや性格テストでよく使われる手口に近い。答えを選ばせること自体が目的で、選んだ内容は結果にほとんど反映されていない。人は自分で選ぶと「これは自分のために用意されたものだ」と感じやすい。その感覚を、次の段階へ進む足がかりに使っているように私には見える。

「無料」のあとに、お金の話が来る

診断のあと、たいていLINEの友だち登録に着く。ここまでは無料だ。問題はその先である。消費者庁は2025年(令和7年)2月の注意喚起で、SNS等に表示されるアンケート副業の広告をきっかけに高額なサポートプランの契約をしたが、報酬が得られなかったなどの相談が各地の消費生活センター等に数多く寄せられている、と説明している。同じ注意喚起は、勧誘で使われる言葉として「初心者でも簡単に稼ぐことができる」「このプランなら、月50万が当たり前になる」「儲けが出なければ返金保証がある」といった文言を挙げている。

順番を並べ替えると、こうなる。無料の診断で気を引く。LINEに登録させる。そこで初めて、数万円から、ときに数十万・数百万円という有料プランの話が出てくる。返金保証や「簡単」という言葉で背中を押し、足りなければ借り入れを勧められることもある、と報告されている。無料はあくまで入口で、診断はその入口の扉だった、という運びである。

数字でほどく:その診断は、割に合うのか では、勧められたプランは元が取れるのか。同じ消費者庁の注意喚起には、調査の結果「サポートプランの契約金額を上回る報酬を得た消費者は確認できませんでした」と記されている。たとえば20万円のプランなら、20万円を超えて稼げた人は確認できなかった、ということだ。払う額は先に決まっていて、戻る額は確かめられない。この一点だけでも、立ち止まる理由になると私は思う。

運営元が見えない、という別の引っかかり

もう一つ、診断サイトやLINEを見ていて気になるのは、運営している事業者の姿が見えないことだ。会社名、住所、電話番号、解約の条件——通信販売では、これらを表示することが法律で義務づけられている。消費者庁の特定商取引法ガイドは、事業者名について個人事業者なら戸籍上の氏名、法人なら登記簿上の名称を記載する必要があり、通称や屋号、サイト名は認められない、住所や電話番号も正確に表示しなければならない、と説明している。

連絡手段がメッセージアプリだけで、住所も電話番号も出てこない。振込先が個人名義の口座になっている。そうした状態は、東京都もSNSがきっかけの副業トラブルの特徴として注意を呼びかけている。要するに、相手が誰なのかを名乗らないまま、こちらの財布だけが先に開く構図になっていないか。そこを見てほしい。

相談はこれだけ増えている

これは珍しい話ではない。国民生活センターによると、副業のトラブルでSNSがきっかけだった割合は、2020年末の23%から、2021年末36.2%、2022年末43.9%、2023年末には63.4%へと上がっている。情報商材に関する相談件数も2020年の1,341件から2023年の3,694件へと増えていると報告されている。広告の見た目は案件ごとに違っても、入口(無料・簡単・診断)から出口(高額プラン)までの運びは、同じ型に収まっていく。

登録ボタンの前に、確かめておきたいこと

  • 診断の結果が、選んだ答えで本当に変わっているか(全員同じ案内に着いていないか)
  • 「無料」のあとに、有料プランの話がいつ、いくらで出てくるか
  • 事業者名・住所・電話番号・解約条件が、最後まで読んでも出てくるか
  • 「簡単」「返金保証」「月◯◯万」という言葉だけで、稼ぎの中身が説明されていないか
迷ったとき用の一言 本当に「あなたに合う」ものを真剣に選ぶなら、たった三問では足りないはずだ。10秒で出た「あなただけの結果」は、たいてい全員に向けた同じ結果である。急がなくていい。診断の結果は、明日押しても同じものが出る。

この記事のまとめ

  • 「無料診断」は、答えで結果が変わらないまま全員を高額プランへ運ぶ入口になっていることがある
  • 払う額は先に決まり、戻る額は確かめられない——公的調査でも契約額を上回る報酬は確認されていない

確かめ方は、診断の結果が本当に分かれているか・無料の先にいくらの話が来るか・運営元が名乗っているか。で、その報酬は、誰の何から出ているのか。すでに契約してしまった場合や判断に迷うときは、一人で抱えず、消費者ホットライン「188(いやや)」に相談してほしい。最終的な判断は、正規の窓口に委ねるのが一番確かだ。