第177号黒岩検閲済 2026年6月19日 発行(不定期刊/前号:6月19日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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「AIが当てる特別な銘柄」をうたう投資顧問──月数十万円のプラン勧誘を、お金の流れでほどく

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黒岩警戒度

「無料登録で特典の5銘柄を進呈」。そこから「AIが当てる特別な情報がある」と続き、最後に「月数十万円の特別会員コース」へ案内する。投資顧問をうたう勧誘で、私が何度も見てきた運びだ。特定の案件を名指しするつもりはない。案件をまたいで繰り返し現れる一つの型として、お金の流れで読んでほしい。

入口が無料なのは、出口が高額だからである

まず確かめたいのは、その「無料」を誰が払っているのか、だ。無料の銘柄情報も、AIをうたうツールも、運営すればそれなりに費用がかかる。受け取る側がお金を払っていないなら、費用は別のどこかから出ている。多くの型では、その出どころは「後から結ぶ高額プラン」だ。入口の無料は撒き餌で、本命は月数十万円の会員コースのほうにある。

消費者庁もSNSをきっかけにした「もうけ話」について「儲け話をすすめられたら、まずは疑いましょう」と注意喚起している。入口の気前のよさは、後ろにある高額の出口とセットで見たい。

「AIが当てる」でも、問いは一つしか変わらない

「人とAIのハイブリッド」「独自ツールが選び抜く」といった言葉は、専門でない人に「中身は確かめなくていい」と思わせる目隠しになりやすい。だが道具がAIでも、私が投げる質問は同じだ。で、その利益の出どころは?――その銘柄が上がる根拠は何で、外れたときに会費は返るのか。そこが説明されない限り、AIの一語は何も保証しない。

国民生活センターも「投資で『必ず儲かる』ことはありません」「投資サイト上で利益が出ている様子が見られたとしても、見せかけのデータにすぎない可能性があります」と述べている。画面に並ぶ的中実績は、こちらからは裏が取れない。自分で検証できない数字は、根拠としてはかなり弱いと考えていい。

会費を、まず割り算でほどく

たとえば年180万円の会員コースだとする。これを取り戻すには、会費を上回る運用益が要る。元手300万円で考えれば、180万円は60%にあたる。つまり毎年60%超のリターンを出し続けて、ようやく会費分を取り返せる計算だ。1.6を何回かければ、という話ではない。最初の1年で60%を超えないと、もう会費負けが始まる。

そんな手法が本当に手元にあるなら、人を募って会費を取らずとも、黙って自分で回しているはずだ。私はそう見ている。では、その会費は何の対価なのか――そこを一度たどってみてほしい。

「登録された投資顧問だから安全」とは限らない 他人に投資判断の助言をして報酬を得る業務は、金融商品取引法上の登録(投資助言・代理業)が要る。ただし、登録は「届け出が受理されている」という事実であって、助言の質や運用成果を保証するものではない。登録業者であっても、証券取引等監視委員会が助言実績を偽って勧誘したなどとして行政処分を勧告した事例がある。「登録済み」「財務局長の番号あり」は、安全の証明ではなく、最低限の入口にすぎない。

断定的に「必ず上がる」と言う時点で、線を越えている

勧誘の現場でいちばん分かりやすい線がここだ。金融商品取引法は、不確実な事項について「必ず騰がる」「確実に儲かる」と断定して勧誘すること(断定的判断の提供)を禁じている(金融商品取引法第38条)。投資助言業者もこの規制の対象だ。だから、まともな登録業者ほど「必ず」とは言わない。逆に「AIだから外さない」「特別な銘柄で確実に」と言い切る相手は、その一言ですでに守るべき線をまたいでいる、と見ていい。

お金の流れは、だいたい同じ順で進む

無料の特典銘柄で関心を引く。次に「もっと当たる情報がある」と高額プランへ案内する。少額や短期では「効いている」ように見せ、安心したころに上位コースや追加の助言料を勧める。そして、思ったほど増えないと分かる頃には、すでに何十万円も払い終えている。最初の無料と、最後の高額。この落差そのものが設計だと思っておきたい。

規模も小さくない。警察庁の集計では、令和6年のSNS型投資・ロマンス詐欺は1万237件・被害総額は約1,272億円に上る。すべてが投資顧問型というわけではないが、入口で気を許させ、出口で大きく払わせるという流れは共通している。

確かめる順序 相手が登録業者かどうかは、金融庁が公表する登録業者の一覧や検索で、名称・登録番号から自分で照合できる。金融庁は、無登録の業者について「投資者等の保護のための態勢が整っていない可能性が高い」と注意している。番号が本物か、その業者が実在するか――会費を払う前に、ここだけは自分の手で確かめてほしい。

巻き込まれないための、ゆるい行動ルール

気合いで見抜こうとすると疲れる。だから「いつものクセ」にしてしまうのがいい。一番効くのは、その場で決めないことだ。「いったん持ち帰って、登録と数字を確かめます」を口ぐせにするだけで、高額プランの大半は手前で止められる。そのうえで、

  • 会費は「割り算」でほどく。年いくら払い、それを取り戻すには何%の利益が要るかを先に計算する
  • 「登録番号あり」を見たら、金融庁の一覧・検索で名称と番号を自分で照合する
  • 「AIが」「特別な情報が」は、根拠と返金条件が説明されているかで判断する
  • 「必ず上がる」「確実に儲かる」と言い切られたら、その一言を赤信号として扱う

この記事のまとめ

  • 「無料の特典銘柄 → AIが当てる特別情報 → 月数十万円の会員コース」は、入口を無料にして出口で高額を払わせる型
  • 「登録された投資顧問」も安全の証明ではない。登録業者でも行政処分の対象になる

会費は割り算でほどく・登録と番号を自分で照合する・「必ず」と言い切る相手から離れる。この3つを淡々と。すでに払ってしまった場合は、取り戻すこと以上にこれ以上払わないことが先で、相談は消費者ホットライン「188」や警察「#9110」など正規窓口へ。