「AIが当てる特別な銘柄」をうたう投資顧問──月数十万円のプラン勧誘を、お金の流れでほどく
「無料登録で特典の5銘柄を進呈」。そこから「AIが当てる特別な情報がある」と続き、最後に「月数十万円の特別会員コース」へ案内する。投資顧問をうたう勧誘で、私が何度も見てきた運びだ。特定の案件を名指しするつもりはない。案件をまたいで繰り返し現れる一つの型として、お金の流れで読んでほしい。
入口が無料なのは、出口が高額だからである
まず確かめたいのは、その「無料」を誰が払っているのか、だ。無料の銘柄情報も、AIをうたうツールも、運営すればそれなりに費用がかかる。受け取る側がお金を払っていないなら、費用は別のどこかから出ている。多くの型では、その出どころは「後から結ぶ高額プラン」だ。入口の無料は撒き餌で、本命は月数十万円の会員コースのほうにある。
消費者庁もSNSをきっかけにした「もうけ話」について「儲け話をすすめられたら、まずは疑いましょう」と注意喚起している。入口の気前のよさは、後ろにある高額の出口とセットで見たい。
「AIが当てる」でも、問いは一つしか変わらない
「人とAIのハイブリッド」「独自ツールが選び抜く」といった言葉は、専門でない人に「中身は確かめなくていい」と思わせる目隠しになりやすい。だが道具がAIでも、私が投げる質問は同じだ。で、その利益の出どころは?――その銘柄が上がる根拠は何で、外れたときに会費は返るのか。そこが説明されない限り、AIの一語は何も保証しない。
国民生活センターも「投資で『必ず儲かる』ことはありません」「投資サイト上で利益が出ている様子が見られたとしても、見せかけのデータにすぎない可能性があります」と述べている。画面に並ぶ的中実績は、こちらからは裏が取れない。自分で検証できない数字は、根拠としてはかなり弱いと考えていい。
会費を、まず割り算でほどく
たとえば年180万円の会員コースだとする。これを取り戻すには、会費を上回る運用益が要る。元手300万円で考えれば、180万円は60%にあたる。つまり毎年60%超のリターンを出し続けて、ようやく会費分を取り返せる計算だ。1.6を何回かければ、という話ではない。最初の1年で60%を超えないと、もう会費負けが始まる。
そんな手法が本当に手元にあるなら、人を募って会費を取らずとも、黙って自分で回しているはずだ。私はそう見ている。では、その会費は何の対価なのか――そこを一度たどってみてほしい。
断定的に「必ず上がる」と言う時点で、線を越えている
勧誘の現場でいちばん分かりやすい線がここだ。金融商品取引法は、不確実な事項について「必ず騰がる」「確実に儲かる」と断定して勧誘すること(断定的判断の提供)を禁じている(金融商品取引法第38条)。投資助言業者もこの規制の対象だ。だから、まともな登録業者ほど「必ず」とは言わない。逆に「AIだから外さない」「特別な銘柄で確実に」と言い切る相手は、その一言ですでに守るべき線をまたいでいる、と見ていい。
お金の流れは、だいたい同じ順で進む
無料の特典銘柄で関心を引く。次に「もっと当たる情報がある」と高額プランへ案内する。少額や短期では「効いている」ように見せ、安心したころに上位コースや追加の助言料を勧める。そして、思ったほど増えないと分かる頃には、すでに何十万円も払い終えている。最初の無料と、最後の高額。この落差そのものが設計だと思っておきたい。
規模も小さくない。警察庁の集計では、令和6年のSNS型投資・ロマンス詐欺は1万237件・被害総額は約1,272億円に上る。すべてが投資顧問型というわけではないが、入口で気を許させ、出口で大きく払わせるという流れは共通している。
巻き込まれないための、ゆるい行動ルール
気合いで見抜こうとすると疲れる。だから「いつものクセ」にしてしまうのがいい。一番効くのは、その場で決めないことだ。「いったん持ち帰って、登録と数字を確かめます」を口ぐせにするだけで、高額プランの大半は手前で止められる。そのうえで、
- 会費は「割り算」でほどく。年いくら払い、それを取り戻すには何%の利益が要るかを先に計算する
- 「登録番号あり」を見たら、金融庁の一覧・検索で名称と番号を自分で照合する
- 「AIが」「特別な情報が」は、根拠と返金条件が説明されているかで判断する
- 「必ず上がる」「確実に儲かる」と言い切られたら、その一言を赤信号として扱う
この記事のまとめ
- 「無料の特典銘柄 → AIが当てる特別情報 → 月数十万円の会員コース」は、入口を無料にして出口で高額を払わせる型
- 「登録された投資顧問」も安全の証明ではない。登録業者でも行政処分の対象になる
会費は割り算でほどく・登録と番号を自分で照合する・「必ず」と言い切る相手から離れる。この3つを淡々と。すでに払ってしまった場合は、取り戻すこと以上にこれ以上払わないことが先で、相談は消費者ホットライン「188」や警察「#9110」など正規窓口へ。