第160号黒岩検閲済 2026年6月17日 発行(不定期刊/前号:6月17日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|制度の看板の型

「NISA対象」「登録済み」の看板を自分で確かめる――制度のお墨付きを安心材料にしすぎない型

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黒岩警戒度

「NISA対象です」「金融庁に登録済みの会社です」――勧誘や広告で、こういう制度の看板を見せられることがある。国の制度の名前が出ると、それだけで一段、警戒がゆるむ。今号で扱うのは特定のどこかの会社ではなく、この「制度のお墨付きを安心材料にしすぎる」という読み手側の癖、そしてそこに付け込まれる型のほうだ。

きっかけは、ある正規の証券会社が、本来はNISAの対象でない商品を「対象」と表示して売っていたとして、監督側から行政処分の勧告を受けた、という話を見かけたことだった。免許を持った正規の会社ですら、看板の文字が実態とずれることはある。つまり、看板は「貼られているか」より「中身と合っているか」で見る必要がある。

そもそも「NISA対象」は誰が、どこで決めているのか

NISAには、長期の積立に向く「つみたて投資枠」と、株式やETFなども買える「成長投資枠」がある。何が対象になるかは販売する会社が勝手に決めているわけではなく、制度の側に基準がある。

金融庁の説明では、成長投資枠の対象からは「①整理・監理銘柄 ②信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等を除外」する、とされている(金融庁「NISAを知る」)。要するに、値動きの荒い商品や、分配を毎月出して元手を取り崩しやすいものは、長く資産形成する枠からは外す、という考え方だ。

そして、実際にどの商品が対象かは一覧で確認できる。つみたて投資枠の対象は金融庁「つみたて投資枠対象商品」が公開し、成長投資枠で買える投資信託やETFなどは資産運用業協会「NISA成長投資枠の対象商品」が取りまとめて随時更新している。監理・整理銘柄に指定されるなどで対象から外れた場合も、ここで反映される。

ここで一つだけ持ち帰ってほしい。「NISA対象」と書いてあるかどうかではなく、その商品名が公的な一覧に載っているかどうかが、確かめられる事実だ。看板は会社が掲げるが、一覧は制度の側にある。

正規の業者でも、看板はずれることがある

もう一つ知っておきたいのは、登録された正規の業者であっても、表示が誤っていたり、ルール違反で処分を受けたりすることはある、という点だ。

証券会社などの検査で問題が見つかると、証券取引等監視委員会(SESC)が「金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した」という形で勧告を出す(証券取引等監視委員会の勧告例)。その後、内閣総理大臣(実務上は金融庁)が、登録の取消や「六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる」(金融商品取引法第52条第1項)。勧告から処分へ、という二段構えだ。

つまり、行政処分の勧告が出たという事実は、「その会社が即・詐欺だ」という意味ではない。正規の会社が制度の枠内で問題を指摘され、直すべきを直す、というプロセスでもある。私が言いたいのは逆で、正規でも看板と中身がずれることがある以上、「登録済みだから全部安心」とは読まないでおきたい、ということだ。

看板の型に共通する弱点 「NISA対応」「金融庁登録」「投資者保護基金加入」――どれも本来は意味のある言葉だが、勧誘の場では“安心の記号”としてだけ使われやすい。正規の業者は実態と照合できる。詐欺的な勧誘は、この記号だけを借りて中身を欠く。どちらにせよ、見るべきは記号の有無ではなく、その記号が公的な一覧や記録で裏取りできるかどうかだ。

詐欺的な勧誘は、この看板を「逆向き」に使う

正規の会社が表示を誤るのとは別に、はじめから人を欺くつもりの勧誘は、この制度の看板を装って信用させにくる。金融庁は、「上場確実ですので、必ず儲かります! 元本も保証します!」といった勧誘や、「被害を回復してあげます。その代わり、別の商品を買ってください」という二次被害型について、「入金・送金後に連絡が取れなくなるなど詐欺的商法の可能性が高い」と注意している(金融庁「詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!」)。

規模も小さくない。警察庁の確定値では、令和6年(2024年)のSNS型投資・ロマンス詐欺は認知件数10,237件、被害額1,271.9億円にのぼった(警察庁・令和6年確定値)。「登録済み」「NISA対応」と名乗る画面ほど、文字を信じる前に、その会社名で公的な登録一覧を引いてみてほしい。

「保護される」も、中身を分けて読む

「投資者保護基金があるから安心」という言葉も、よく安心の記号として出てくる。ここは中身を分けて読みたい。

そもそも証券会社は、預かった顧客の資産を自社の資産と分けて管理する「分別管理」が義務づけられている(日本証券業協会「分別管理」、根拠は金融商品取引法第43条の2)。これが守られていれば、会社が万一破綻しても顧客の資産は返ってくる。日本投資者保護基金が動くのは、その分別管理が守られていなかったとき。「分別管理を行っておらず、お客さまの資産を円滑に返還できない場合」に、一人あたり上限1,000万円まで補償する仕組みだ(日本投資者保護基金「投資者保護とは」)。

裏を返せば、この基金は「値下がりした損」「説明不足で損した分」「会社の破綻による商品の無価値化」は補償しない。つまり「保護基金加入」は、運用の失敗や勧誘トラブルを肩代わりしてくれる看板ではない。で、その「安心」は何の何に対する安心なのか。――そこを分けずに鵜呑みにすると、看板の意味を取り違える。

看板を自分で確かめる、ゆるい手順

気合いで見抜くのは疲れる。だから「いつものクセ」にしてしまうのがいい。看板を見せられたら、その場で決めずに、次の確認を一拍おいてからにしてほしい。

  • 「NISA対象」と言われたら、その商品名を金融庁・資産運用業協会の対象一覧で引いて、実際に載っているか見る
  • 「登録済み」と言われたら、会社名・登録番号を金融庁の登録業者一覧と無登録業者の警告リストの両方で照合する
  • 「保護される」と言われたら、それが分別管理の話か、基金の補償の話か、運用損の話かを分けて聞き直す
  • 「必ず儲かる」「元本保証で高利回り」が一言でも混ざったら、看板が本物かどうか以前に、いったん近づかない
迷ったとき用の一言 制度の看板は、相手が掲げるもの。確かめられる事実は、こちら側が引ける一覧の中にある。本当に正規の機会なら、こちらが一覧で裏を取る時間を取ることを、嫌がったりはしない。

もし判断に迷ったり、すでにやり取りが進んでいたりするなら、外の窓口で一度たしかめてほしい。金融商品のことなら金融庁の金融サービス利用者相談室(0570-016811)、暮らし全般の困りごとは消費者ホットライン188。私には個別の判定はできない。最終的な判断は、こうした正規の窓口に委ねるのが一番確かだ。

この記事のまとめ

  • 「NISA対象」「登録済み」「保護基金加入」は意味のある言葉だが、正規業者でも表示はずれ、詐欺的勧誘は記号だけを借りる
  • 見るべきは看板の有無ではなく、その商品・会社が公的な一覧や記録で裏取りできるか

「保護」も、分別管理・基金の補償・運用損を分けて読む。迷ったら、その場で決めず、対象一覧と登録一覧を自分で引いて、正規窓口で裏を取る。