第453号黒岩検閲済 2026年8月10日 発行(不定期刊/前号:8月10日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|SNS運用スクール×仕事紹介不保証の型

「実際の仕事をあっせんします」と掲げるSNS運用スクールが、契約書面では仕事紹介の報酬を保証しないと明記する型を、業務提供誘引販売取引の一次情報で調べた

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黒岩警戒度

「実際の仕事をあっせんする制度を用意しています」。SNSの運用スキルを教えるスクールの案内に、そう書かれていることがある。ところが同じ契約の特定商取引法に基づく表示には、「将来の利益も、特定の仕事の紹介による報酬も保証するものではない」と記されていることがある。特定の事業者名は伏せ、案件をまたいで現れるこの型を、業務提供誘引販売取引の一次情報から調べた。

「仕事をあっせんします」と、契約書面の「保証しません」が並ぶ

この型を法律の言葉で見ると、輪郭がはっきりする。特定商取引法には、「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で商品・研修等の対価を負担させる取引に、業務提供誘引販売取引という名がついている。

「『仕事を提供するので収入が得られる』という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引のこと」(消費者庁「業務提供誘引販売取引」特定商取引法ガイド

つまり、"仕事のあっせん"を入り口の誘い文句にして、"研修費・受講料"という金銭負担を求める構図そのものが、法律上すでに名前を持つ型だということになる。SNS運用のスキルを教える講座で「実際の仕事を斡旋する制度を用意」と説明されながら、同じ契約の特商法表示には「仕事の紹介による報酬を保証するものではない」と書かれている場合、看板の言葉と契約の言葉が、同じ紙の上で向き合っていないことになる。

仕事のあっせんを掲げる相手から、商品や研修費を求められたら 「仕事に就くために、仕事の提供やあっせんをする事業者から商品を購入したり、高額な加盟料等を負担しなければならないということは、常識的に考えにくいところです」(消費者庁 特定商取引法ガイド 事例「データ入力の仕事を提供すると言われた契約した。」)。私はこの一文を、この型全体への注意として読んでいる。仕事をあっせんする側が、その仕事に就くための費用を先に求めてくる時点で、順序が一つ引っかかる。

金額は、説明会に出るまで分からない——順序の話

相談を並べると、金額が示される順番にも共通した特徴がある。実際にどれくらいの費用がかかるかは、無料の勉強会や個別の説明会に出席したあとで、初めて示されることが多い。

だが、業務提供誘引販売取引にあたる取引には、そもそも金額を先に示す義務がある。「契約の締結前には、当該業務提供誘引販売業の概要を記載した書面(概要書面)を渡さなくてはなりません」(消費者庁「業務提供誘引販売取引」特定商取引法ガイド)。概要書面には金額(特定負担)の内容も含まれる。説明会に出席するまで金額が分からない、という運びは、この「契約前に書面で示す」というあるべき姿とは、順序が逆になっている。

もう一つ、口頭では踏み込んだ言い方をしながら、契約書面では利益を保証しないと明記する——この振れ幅は、消費者契約法にも関わる。「将来における…変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること」(消費者契約法第4条第1項第2号)は、契約の取消しにつながりうる行為として定められている。「将来の利益は保証しない」と書かれた契約の勧誘の場で、口頭では言い切りに近い言葉が使われていないか。書かれている言葉と、言われた言葉の両方を、後から見比べられるように残しておいてほしい。

「返金保証」をうたっても、実際には応じてもらえないことがある

高額な契約に踏み切る決め手として、「返金保証」という言葉が添えられることがある。だが、実際に返金を求めた相談者が、そのまま引き下がらされる例が公的な調査にも記録されている。

「契約内容は既に実施済み、として返金に応じない」(国民生活センター調査報告書「消費生活センターにおける解決困難事例の研究~起業・副業をめぐる消費者トラブルの被害救済を中心に~」2023年3月)。同じ報告書には、他にも「クーリング・オフや規約上の中途解約期間経過後は交渉に応じない」「『一切苦情を言わない』等の和解書や合意書を交わしていることを理由に、交渉に応じない」という例が並ぶ。返金保証という言葉そのものより、その条件と期限が契約のどの一文に書かれているかを、私は確かめたい。

この種の副業・起業に関する相談は、件数でも増えている。「サイドビジネス商法は2014年度以降、毎年度増加している状況にある」(同報告書)。同報告書によれば、契約購入金額・既払額は「10万〜50万円未満」がおよそ4割で最も多く、「100万円以上」も1割以上を占める。契約者は男女とも20歳代が4割以上と、若い世代が目立つ。返金保証は、この規模の契約を決断させる最後の一押しになりやすい言葉だと私は見ている。

クーリング・オフは「20日」か「8日」か、そもそも対象か

「クーリング・オフはできない」と言われても、それが法律上の答えとは限らない。

「法律で決められた書面を受け取った日から数えて20日以内であれば、消費者は業務提供誘引販売業を行う者に対して…契約の解除(クーリング・オフ)をすることができます」(消費者庁「業務提供誘引販売取引」特定商取引法ガイド)。業務提供誘引販売取引にあたる契約なら、20日間のクーリング・オフが法律で保障される。実際、消費者庁が扱う事例でも、業者側に「クーリング・オフはできない」と言われた相談者に対し、20日以内であれば解除できると案内されている(消費者庁 特定商取引法ガイド 事例「ドロップシッピングの契約を結んだが説明と違って収入が得られない。」)。

一方、エステや語学教室など特定継続的役務提供にあたる契約は8日間で、対象は決められた7業種に限られる。「法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば…契約(関連商品の販売契約を含む)の解除(クーリング・オフ)をすることができます」(消費者庁「特定継続的役務提供」特定商取引法ガイド)。SNS運用スクールがこの7業種に含まれるとは限らない。どちらの型にあたるか、あたるとしても対象かどうかは契約の実質で決まる。ここは私が決めつけていい場所ではない。契約書面を持って、消費生活センターに当ててみてほしい。

数字でほどく——受注率・受講生数の「母数」

「累計受講生◯人」「受注率◯%」——こうした実績の数字は、それ単体では検証できない。母数と算出条件が示されなければ、数字は数字の形をした言葉にすぎない。

「合格率、合格者数、仕事量、平均収入などは資料をもらって良く確認しましょう」(消費者庁 特定商取引法ガイド 事例「在宅ワークの契約をしたが、テストに合格できず仕事の提供がない。」)。実績を語るなら、その根拠となる資料を出せるはずだ。母数の説明なく著しく優良に見える数字を示す表示は、景品表示法の考え方でも問題になり得る。「事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる」(消費者庁「表示規制の概要」)。根拠を求めても出てこない数字は、いったん実績として数えないでおく。それが一番確かな距離の取り方だと思う。

迷ったとき用の一言 「仕事をあっせんします」と「保証はしません」、両方が同じ契約の中にあるなら、まず後者を信じてほしい。契約書面は、口頭の説明より長く残る。
  • 「仕事をあっせんする」という説明と、契約書面(特定商取引法表示)の「保証しない」旨の文言、両方を並べて読む
  • 受講料・研修費の総額を、説明会に出る前に文書でもらう
  • 「確実に稼げる」に近い口頭の説明と、契約書面の記載が食い違っていないか確認する
  • 返金保証をうたわれた場合、条件と期限が契約書のどの一文に書かれているか確かめる
  • 契約の種類(業務提供誘引販売取引か、特定継続的役務提供か、どちらでもないか)とクーリング・オフの対象・期間を消費生活センターに確認する

この記事のまとめ

  • 「仕事をあっせんする」という看板と、契約書面の「保証しない」旨の記載は、同じ取引の中で向き合わないことがある
  • 業務提供誘引販売取引にあたる契約なら20日間のクーリング・オフが法律で保障される。「できない」と言われてもそれが答えとは限らない
  • 実績の数字は、母数と根拠資料を確認するまで実績として数えない

対策は、契約書面の一文を自分で読む・金額を書面で先にもらう・迷えば消費生活センター(188)に当てる、この3つに尽きる。すでに契約してしまった場合も、まず追加の支払いを止めることが先だ。