「利益が確定した商品を選んで卸すだけ」と謳う物販勧誘が、事業者の氏名も対価も明かさないまま業務提供誘引販売取引の費用を負わせる型を、特定商取引法・国税庁の一次情報で調べた
利益が確定した商品を、運営が選んで卸すだけ——そう説明される物販の勧誘を見かけることがある。特定の事業者名は伏せ、案件をまたいで繰り返し現れるこの型を、特定商取引法・国民生活センター・国税庁の一次情報とお金の流れで調べた。
型を、お金の流れで分解する
個別の事業者名は伏せる。だが、寄せられた相談を並べてみると、流れはおおむね同じ順序をたどる。順を追って見ていく。
入口:「リサーチ不要」「利益が確定した商品を卸すだけ」という言葉
広告や紹介文には、未経験でもできる、手間がかからない、という言葉が並ぶ。国民生活センターの発表には、こうある。
「広告や友人等からの紹介では『未経験者でもOK』『月に数十万〜数百万円の収入可能』『1日10分のスマホ作業で稼げる』『実質無料で始められる』など時間、労力、費用などのコストがかからず誰でも簡単に高収入を得られると強調する内容が共通してみられ、消費者に興味を持たせています」(国民生活センター「『転売ビジネス』で稼ぐつもりが…簡単には儲からない!」2021年)
「利益が確定した商品を、運営が選んで卸すだけ」という言い方は、この中でも一番手間のかかる仕入れの目利きを、丸ごと相手任せにできる、という誘い文句だ。手間を肩代わりしてもらえる話ほど、その手間の対価を誰が払うのかを確かめたい、というのが私の見方である。
中継点:名乗らない事業者
興味を持って先に進むと、費用の話の前に、まず事業者の名前がはっきりしないことに気づく場合がある。通信販売の広告について、消費者庁は次のように解説している。
「事業者の氏名(名称)、住所、電話番号などを表示しなければなりません」「個人事業者の場合は戸籍上の氏名又は商業登記簿に記載された商号を、法人にあっては登記簿上の名称を記載することを要し、通称や屋号、サイト名のみを表示することは認められません」(消費者庁「通信販売の広告について」特定商取引法ガイド)
屋号やサイト名だけでは足りない、と消費者庁は明記している。名乗らない事業者に、まず一つ確かめるべき点があるとすればここだ、と私は考える。
出口:業務提供誘引販売取引という枠組みと、後出しの費用
「仕事を提供するので収入が得られる」と言って商品を売り、金銭の負担を求める取引には、特定商取引法上の呼び名がある。業務提供誘引販売取引という。
「『仕事を提供するので収入が得られる』という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引のこと」(消費者庁「業務提供誘引販売取引」特定商取引法ガイド)
この枠組みに該当する取引には、業を行う者の氏名・住所・電話番号や特定負担の内容を広告に表示する義務、契約前に交付する概要書面と契約後に交付する契約書面の義務が定められている。書面を渡されないまま、口頭やチャットのやり取りだけで話が進んでいないか、確かめてほしい。
確かめられる一点:事業者は実在するか
名前が示されたとしても、それだけで安心はできない。実在するかどうかは、こちらで確かめる手段がある。
「国税庁法人番号公表サイトでは、法人番号の指定を受けた法人等の基本3情報(商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地、法人番号)を検索することができます」(国税庁「法人番号公表サイト ご利用方法について」)
名乗られた社名を、このサイトで検索してみる。それだけで、登記された法人かどうかは確かめられる。ただし、法人番号があるからといって、その物販事業に実績があることまでは保証しない。「登記の有無」と「事業の実態」は別の話だ、と私は切り分けて考えている。個人事業主の場合は、そもそもこのサイトの検索対象に含まれない点にも注意したい。
編集部が確認した限りでは、この型の勧誘には、好意的な口コミや第三者からの評価がほとんど見当たらないことが多い。確かめようのない実績は、実績として数えない——他の型を調べたときにも、繰り返し出てくる観察である。
数字でほどく
転売ビジネスに関する相談は、この型に限らず増えてきた。国民生活センターによれば、PIO-NETに寄せられた相談件数は2015年度の548件から2019年度には1,411件まで増えている(国民生活センター、前掲)。割り算をすると、約2.6倍という計算になる。2020年末時点の集計ではあるが、案件の名前や広告の見た目が変わっても、入口の言葉と出口の構造は同じ型に収まる、と私は見ている。
契約前に確かめておきたいこと
気合いで見抜こうとすると疲れるので、私はいつも「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思っている。次の点を確かめてほしい。
- 「リサーチ不要」「利益確定」という言葉が、事業者の氏名や対価の説明より先に出ていないか確認する
- 広告や紹介文に、法人なら登記上の名称、個人なら戸籍上の氏名が明記されているか確かめる
- 名乗られた社名を、国税庁の法人番号公表サイトで検索してみる
- 契約前に「概要書面」、契約後に「契約書面」が渡されるか尋ねる
- 紹介された実績や口コミを、自分の手で裏取りできるか考える
この記事のまとめ
- 「利益が確定した商品を運営が選んで卸すだけ」という物販勧誘は、事業者の氏名や対価の表示を欠いたまま進むことがある
- 業務提供誘引販売取引にあたりうる取引には書面交付の義務があり、示されない時点で立ち止まる材料になる
- 事業者の実在は国税庁の法人番号公表サイトで確かめられるが、登記の有無と事業の実態は別の話
対策は、名前が示されない場面で止まる・実在と実績を自分で確かめる、この2つに尽きる。すでに費用を払ってしまった場合は、まず追加の支払いを止め、やり取りの記録を残したうえで、支払った決済元(クレジットカード会社・銀行)に確認し、消費者ホットライン「188」や最寄りの消費生活センターに相談してほしい。