第153号黒岩検閲済 2026年6月17日 発行(不定期刊/前号:6月17日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|不満を入口にする型

「ロボアドの成績が物足りない」の先に置かれる“もっと稼げる手法”――不満を入口にする送客の型を、お金の流れでほどく

公開 最終更新 読了 約6分
黒岩警戒度

「ロボアドの成績が思ったほど伸びない」「積立の利回りが物足りない」。そう感じて検索した人が行き着く記事の中に、ひとつ気になる型がある。本文は冷静に成績を分析していて、もっともらしい。ところが読み進めると、決まって同じ案内が差し込まれている。「現役トレーダーが教える、運用資金を数倍にした手法はこちら」。今号は、この“不満を入口にして別の手法へ送り出す”流れを、お金の側からほどいておきたい。

なぜ「成績への不満」が入口に選ばれるのか

広告を打つ側から見ると、いちばん動かしやすいのは「すでにお金を投じる意思があって、いまの結果に不満を持っている人」だ。投資をしたことのない人を口説くより、はるかに手間がかからない。だから「ロボアド 成績 悪い」「積立 増えない」といった不満の言葉が、入口の見出しに選ばれる。

つまり、入口の記事が「中立の分析」に見えることそのものが手段になっている。手数料や相場の話を冷静に説いて信頼を借り、その信頼のまま、出口の「もっと稼げる手法」へ運ぶ。入口が“解説”の顔をしているぶん、勧誘だと気づきにくい。ここがいやらしいところだと、私は見ている。

記事を無料で出し続けられる理由を、数字でたどる

記事を毎日書き、広告を出すには、手間も費用もかかる。それを無料で続けられているなら、費用はどこか別の場所から回収されている。で、その出どころは?――多くの場合、答えは紹介(送客)の報酬だ。読者が出口のリンクから登録・課金・口座開設をすると、紹介した側に成果報酬が入る。記事は情報提供と、特定サービスへの通路を兼ねている、という形になる。

紹介そのものは違法ではない。問題は、中立に見える記事が導線になっていることと、送客の先が無登録業者や詐欺的な勧誘だったとき、損をするのは読んだ側だ、という点である。

「運用資金が数倍」を、まず割り算でほどく

こうした記事の出口には、よく「運用資金が7.7倍になった手法」といった景気のいい数字が置かれている。まず、この数字を割り算で確かめたい。仮に1年で7.7倍になるなら、それは年に約670%の利回りということだ。ロボアドや積立が前提に置く期待リターンは、ふつう年に数%。670%とは二桁以上の桁が違う。

そんな運用が確実にあるのなら、人を募って手法を配ったりせず、黙って自分の資金で回しているはずだ。配って広めるほど、同じ相場で取り合う仲間が増えて、自分の取り分が減る。配っているという事実そのものが、その数字を疑う理由になる。見せられた「7.7倍」も、当たった分だけを後から見せられた検証できない実績にすぎない。これは 「元本保証で月利10%」って本当にあるの? で扱った数字の落差と、同じ筋の話だ。

この型に共通する狙い 正規のサービスへの不満は、けっして悪いものではない。だが、その不満を「もっと稼げる」という別の話へ横滑りさせられたとき、判断の軸が「いまより増やせるか」だけにすり替わる。冷静に比べる視点を外させて、出口のボタンへ運ぶ――それが、この入口のいちばんの狙いだと考えていい。

送客の先が、危ない場所のことがある

送り出された先が、日本で登録を受けた業者とはかぎらない。金融庁は、無登録の業者との取引について「日本で登録を受けずに金融商品取引業や暗号資産交換業を行うことは違法です。」と注意を促している(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」随時更新)。登録を受けていない業者は、投資者保護の態勢が整っているか当局でも確認できない、とされる。

そして、SNSや広告を入口にした投資勧誘の被害は、いま小さくない規模になっている。警察庁の公表値では、SNS型投資詐欺の認知件数は9,538件、被害額は1,274.7億円と、前年に比べ件数・額ともに大きく増えている(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」2026年2月公表)。金融庁も、SNS等を通じて「必ず儲かる」とうたう高利回りの投資話に勧誘されるケースに注意するよう、繰り返し呼びかけている(金融庁「詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!」随時更新)。

では、見るべきはどこか。値上がりの予告でも、手法の華やかさでもない。送り出された先が、日本で登録された業者かどうか。そこに尽きると私は思う。

巻き込まれないための、ゆるい行動ルール

気合いで見抜こうとすると疲れる。だから「いつものクセ」にしてしまうのがいい。一番効くのは、出口のリンクを踏む前に一拍おくことだ。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにしてしまえば、それだけで大半は防げる。そのうえで、

  • 記事の出口にあるリンク先が、どんなサービスへ送っているかを先に確かめる
  • 「数倍」「○○倍」の数字は、年利に割り戻してから現実味を測る
  • 送客先が、日本で登録された業者かどうかを金融庁の一覧で照らす
  • 「無料LINE登録」だけでも、一拍おいてからにする
迷ったとき用の一言 いまのサービスの成績に不満があるなら、まずはその商品自体を冷静に見直せばいい。不満を、別の「もっと稼げる話」へ乗り換える理由にしないこと。本当に健全な機会なら、こちらが調べる時間を取ることを嫌がったりはしない。

この記事のまとめ

  • 「成績への不満」を入口に、中立に見える記事から「もっと稼げる手法」へ送る型がある
  • 無料で記事を出し続けられる費用は、多くの場合「送客の報酬」で回収されている
  • 判断の軸は手法の魅力ではなく、送り出された先が日本で登録された業者かどうか

すでに送客先へお金を入れてしまった方は、お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。追加入金を求められたらそこで止め、やり取りの記録を残し、決済元に連絡したうえで、消費者ホットライン「188」や警察相談専用電話「#9110」など正規の窓口に相談してほしい。