第426号黒岩検閲済 2026年8月4日 発行(不定期刊/前号:7月31日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|相場速報の個人名クレジット×バックテスト実績の型

市況ニュースの下に添えられた「個人名クレジットの相場先読みLINE」への信頼のまま、投資顧問・AIツールの「勝率80%超」というバックテスト実績へ進む型を、表示の根拠で調べた

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黒岩警戒度

「日経平均は反発」「為替は円高基調」――こうした市況ニュースを読み終えたすぐ下に、「〇〇による相場先読み速報、LINEで無料配信中」という案内が添えられていることがある。今号で扱うのは特定のサイトや記事ではない。市況ニュースの体裁に、配信者個人の名前をクレジットした速報LINEへの案内をセットで置き、その信頼を保ったまま投資顧問サービスやAI投資ツールの「勝率80%超」という実績表示へ読者を運ぶ、という組み立ての型だ。

なぜ「個人の名前」が信頼の入口になるのか

日経平均やTOPIXの値動きという中立な事実を淡々と伝える記事の下に、「〇〇による速報」と個人名が添えられていると、読者はどこかの組織が出す広告ではなく、「一人の相場観察者の見立て」を受け取っている、という構えになりやすい。名前が見えるというだけで、警戒はわずかに緩む。

広告であることを示さずに広告的な表示をする点については、消費者庁が「広告であるにもかかわらず、広告であることを隠すことがいわゆる『ステルスマーケティング』です」とし、令和5年10月1日から景品表示法違反となる規制を設けている。さらに「専門家の客観的な意見のように記載されているものの、実際には、当該専門家に報酬を支払ってコメントを依頼しており『事業者の表示』に当たるもの」という例も消費者庁は挙げている。個人名がクレジットされているからといって、その先の投資顧問・AIツール紹介が誰の依頼で書かれたものかは、この場では確認できない。

「勝率80%超」というバックテスト実績の中身

速報LINEの先で語られる投資顧問・AIツールの実績には、「勝率80%超」「利益率297%」といった数字が並ぶことが多い。ただ、この手の数字の多くはバックテスト――過去の値動きのデータに、後から当てはめて計算したシミュレーション結果にすぎない。

つまり、これから先の相場でも同じ成果が出ることを約束する数字ではない。何銘柄を対象に、いつからいつまでのデータで計算したのかが書かれていなければ、外から検証しようがない数字だと考えていい。

有価証券の値動きについて断定的な判断を示して勧誘する行為は、金融商品取引法第38条が「不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げて金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為」として禁じている。「勝率80%」という表示そのものが直ちに違法というわけではないが、その数字を根拠に「儲かる」と思わせる勧誘には、この禁止規定が関わってくる。で、その勝率は、誰が、何を根拠に示しているのか。

2つに共通する狙い 配信者個人への信頼と、検証できない実績数字。入口は違っても、狙いは「これは広告ではなく、一人の専門家の見立てだ」という構えのまま、読者を次の登録・入金へ運ぶことで一致している。

その先の投資顧問・AIツールは、登録を受けているか

個人の見立てとして紹介されていても、その先で実際に投資助言や自動売買を提供するのは事業者である。他人の資産運用について有償で助言する投資助言業は、内閣総理大臣(財務局)への登録が必要な業務だ。金融庁は「日本の居住者を相手に、株取引やFX取引、暗号資産取引などの金融商品取引業・暗号資産交換業を行う者は、日本の法令に基づき、登録を受ける必要があります」と説明している。

金融庁は「無登録で金融商品取引業を行っているとして、金融庁(財務局)が警告書の発出を行った者の名称等を掲載しています」というページを公開しており、「AIが自動で有望株を選ぶ」といった名目のツールが、この警告リストに載る例は一度や二度ではない。名前の親しみやすさと、登録の有無は別の話だ。

確認しておきたい3つのこと

市況ニュースそのものを疑う必要はない。確かめるのは、その下に添えられた案内の中身だ。

確認1:速報の配信者名と、投資顧問・AIツールの提供元は同じ組織か

個人名で親しみやすく見せている速報LINEと、その先で実績を語る投資顧問・AIツールが、実際には同じ事業者によるものなのか、外からは見分けがつかないことが多い。まずそこを疑ってみてほしい。

確認2:実績の母数と期間は書かれているか

「勝率80%」の裏に、何回のシミュレーションのうち何回が対象なのか、いつからいつまでの計算なのかが書かれているかを見てほしい。書かれていないなら、それは検証できない数字だと考えていい。

確認3:紹介されている投資顧問・AIツールの提供元は、登録を受けているか

投資助言・代理業として登録されているかどうかは、金融庁のウェブサイトで確認できる。名前の親しみやすさではなく、この一点を先に確かめてほしい。

迷ったとき用の一言 「このバックテスト、母数と期間を教えてもらえますか」。個人名で親しみを演出した速報ほど、たいていこの一問には答えない。

この記事のまとめ

  • 市況ニュースの下に配信者個人名をクレジットした速報LINEを置き、その信頼のまま投資顧問・AIツールの検証できない実績数字へ読者を運ぶ型がある
  • 「勝率80%超」等の実績の多くは過去データのバックテストにすぎず、将来の成果を約束する数字ではない

確かめるのは記事の読みやすさや配信者の親しみやすさではなく、実績の母数・期間と、その先の事業者が登録を受けているかどうかだ。