著名人の「逮捕」というフェイクニュース広告から始まる、暗号資産CFD勧誘の型を、消費者庁・警察庁の一次情報で調べた
「有名人が逮捕された」という広告を見て、驚いてタップしてしまった——という相談が増えています。実際には本人とは無関係のフェイクニュースで、その先にはマッチングアプリやSNSのダイレクトメッセージ、LINEでの個別チャット、そして暗号資産CFDのような取引サイトへの誘導が続く、という型があります。特定の案件名は挙げず、公的資料の数字と仕組みだけを追ってみます。
入口は「著名人の逮捕」という、本人とは無関係のフェイクニュース
消費者庁「SNSなどを通じた投資や副業といった『もうけ話』にご注意ください!」は、「著名人・有名人のなりすましと考えられる事例が令和5年度下半期以降、増加傾向にあります」としています。芸能人が逮捕された、摘発されたという見出しは、本人の投稿でも報道機関の記事でもなく、勧誘のための広告である可能性がまず疑われます。
国民生活センター報道発表(2024年)によれば、こうした相談は「2022年度と比べて約9.6倍と急増しています」とされ、平均の契約購入金額は約644万円(60歳代では約852万円)にのぼると記載されています。「著名な投資家や経済学者等を名乗っていても、本人に無断で写真や氏名等を使用した勧誘が横行しています」という指摘もあり、実在の著名人の写真・氏名が無断で使われている点も共通しています。
SNSからマッチングアプリ、そしてLINEの個別チャットへ
手口はSNSの広告だけで完結しません。国民生活センター報道発表(2021年)は「出会い系サイトやマッチングアプリ等は、気軽に登録できるところが利点であるものの、本人確認が難しい面があり、詐欺を目的とする人物が紛れ込んでいる可能性があります」と指摘しています。
警察庁SOS47「SNS型投資詐欺」でも、「SNSのダイレクトメッセージで接触後、被害者をLINEなどの他のSNSに誘導し」という流れが手口として説明されています。公開のプラットフォームから、個別のやり取りに閉じた場所へ——という移動そのものが、外部からのチェックを避けるための設計だと捉えていいと思います。
「アンケート」で個人情報を渡してしまう入口
LINEでの個別チャットが始まると、投資診断や会員登録を装ったアンケートで個人情報を求められることがあります。前出の国民生活センター(2021年)は「投資サイト等の登録時などに求めに応じて免許証などの身分証明書の写しを提供した結果、個人情報の悪用が懸念される事態となったケースも見られます」と注意を促しています。
誘導される先の多くは、暗号資産CFDのような取引サイト
最終的に誘導される先の多くは、暗号資産CFDに類似した取引サイトです。金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」は、無登録業者について「預けた資金を出金しようとしたときに、これまで出金ができていたにもかかわらず、出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたりするほか、これまで連絡が取れていたのに急に連絡が取れなくなる」と注意喚起しています。
国民生活センター(2021年)も「サイト自体が架空である可能性があります。また、勧誘者の実態もつかめないことが多く、連絡がつかなくなった場合、被害の回復は困難となります」としており、金融庁自身も「SNS上の投資詐欺が疑われる広告等に関する情報受付窓口の設置等について」で「昨今、著名人等になりすましたものを始めとするSNS上の投資広告や投稿等による詐欺被害が数多く発生しており」と、この型の広がりを認めています。
特定商取引法の表記なしは、それだけで判断材料になる
このような取引サイトの多くには、特定商取引法に基づく表記がありません。消費者庁 特定商取引法ガイド「通信販売広告について」は、通信販売事業者について「個人事業者の場合には、氏名又は登記された商号、住所及び電話番号を表示する必要があります」と定めています。この表記がない、または実在しない住所・電話番号が書かれている時点で、その事業者は法律上の最低限の義務すら果たしていない、と見ていいと思います。
数字で見る、この型の広がり
警察庁「令和7年11月末における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」(令和7年12月25日公表・暫定値)によると、SNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は13,209件、被害額は1,550.6億円にのぼり、前年同期(認知件数9,335件、被害額1,144.5億円)と比べて増加しています。内訳は投資詐欺が認知8,217件・被害額1,071.1億円、ロマンス詐欺が認知4,992件・被害額479.5億円です。
- 有名人の「逮捕」「摘発」というニュースは、本人の公式発表や報道機関の記事でしか確認しない
- SNSからLINEなど個別チャットへ誘導されたら、いったん立ち止まって家族や友人に話してみる
- 投資サイト登録時のアンケートで身分証の写しを求められても、その場では応じない
- 出金時に「税金」「手数料」名目の追加送金を求められたら、それ以上は払わない
- 特定商取引法の表記(氏名・住所・電話番号)がないサイトは、その時点で利用しない
この記事のまとめ
- 入口は「著名人の逮捕」というフェイクニュース広告、出口の多くは暗号資産CFDのような取引サイト
- SNS型投資・ロマンス詐欺の被害額は令和7年で1,550億円を超え、前年同期より増加している
「本人確認」「特商法表記」「出金の可否」——この3つを事前に確認する習慣が、結局いちばんの防御になると思います。