第150号黒岩検閲済 2026年6月17日 発行(不定期刊/前号:6月17日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|出金トラブルの型

「画面では増えているのに、出金だけができない」――海外プラットフォーム型の投資勧誘を、お金の流れでほどく

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黒岩警戒度

アプリの画面を開くと、預けたお金が日に日に増えている。グラフは右肩上がりで、含み益も表示されている。ところが、いざ出金しようとすると話が変わる――「税金を先に払ってください」「手数料を入れないと送金できません」。こう言われて、さらにお金を求められる。今回はこの「海外プラットフォーム型の出金トラブル」を、ひとつのとして淡々とほどきます。個別の業者名を裁く話ではありません。お金の流れで見ると、どこに無理があるのか、という話です。

いちばん危ういのは、「最初は出金できる」こと

この型のいやらしいところは、入口でいきなり出金を止めないことです。少額を試しに引き出すと、ちゃんと振り込まれる。「ああ、本当に出せるんだ」と安心する。その安心が呼び水になって、金額を上げていく。問題が表に出るのは、たいてい残高がまとまった額になってからです。

金融庁の相談室にも、同じ筋の相談が寄せられています。「SNSを通じて知り合った人から投資を勧められたが、儲けを引き出せない。引き出すには『手数料等(保証金、税金、認証料)を払え』と言われている」というものです(金融庁 金融サービス利用者相談室「投資詐欺等に関する相談事例」)。最初の少額出金は、信用を買うための釣り銭だ、と私は見ています。

で、その「利益」の出どころは?――お金の流れで見る

画面に出ている含み益と、実際に動いているお金は、別物として分けて考えたほうがいい。表示上の数字は、運営側が自由に書ける一行にすぎません。本当に運用されて利益が出ているのか、それとも数字を見せられているだけなのか――こちらからは確かめられない、というのがこの型の核心です。

そして出金の段になると、追加入金を求められる。金融庁は、同じ手口についてこう書いています。「口座凍結を解除するため」などと称して「手数料、保証金や税金の支払いといった名目で、さらに高額な入金(被害者が認識させられている財産額の2〜3割程度)を要求されるケースが報告されています」(前掲・金融庁相談室)。

数字でほどく――「税金を払えば出せる」の中身 仮に100万円を預け、画面の残高が「130万円」になっているとする。ここで「出金には利益の20%の税金が必要」と言われれば、求められるのは新たに26万円。払えば今度は「保証金が要る」と続く。注意したいのは、本来、利益にかかる税金を、出金の前に運営へ振り込むという手順は存在しないこと。日本の税金は、自分で税務署や決済を通じて納めるもので、投資先の業者に「先払い」するものではありません。「払えば出せる」が、いつまでも出せないループの入口になっている。で、その追加の26万円は、いったい誰の手元に行くのか。

運営の実体が見えない――無登録・海外所在という信号

もう一つ、お金の流れと並んで見ておきたいのが「相手が誰か」です。この型では、運営会社の登記国が国によってバラバラだったり、そもそも所在がはっきりしないことが多い。日本の居住者に投資を勧誘・運用するには、海外所在をうたっていても金融商品取引業の登録が必要ですが、その登録がない。

金融庁は無登録業者について、「日本で登録を受けずに金融商品取引業や暗号資産交換業を行うことは違法です」「投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず、登録を受けている業者と同等の態勢が整っていない可能性が高い」と注意喚起しています(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)。さらに海外所在業者の事例として、「利益が出ているはずなのに、出金を求めても応じてもらえず」というケースを挙げています(金融庁「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」)。手数料率や利回りを比べる前に、相手が日本で登録された業者かどうかを見る。土俵に上がっているかどうかが先です。

入口はたいてい、SNSとマッチングアプリ

この型の入口は、投資広告というより「人」であることが多い。警察庁も、犯行グループが「SNSやマッチングアプリを通じて被害者と接触した上で、他のSNSに連絡ツールを移行し、やり取りを重ねて被害者を信用させ、預貯金口座への振込み等により被害金をだまし取る」と説明しています(警察庁「令和7年版警察白書」)。親しくなった相手から勧められると、業者そのものを疑う前に「この人は信用できるか」で判断してしまう。狙いはまさにそこにあります。

被害は、もう小さな話ではない 警察庁によれば、令和6年(2024年)中のSNS型投資・ロマンス詐欺は認知件数1万237件、被害額は約1,272億円にのぼり、1件あたりの平均被害額は1,200万円を超えています(前掲・警察庁白書)。前年からの伸びも大きい。「自分だけは大丈夫」と思える規模ではなくなっている、というのが数字の示すところです。だからこそ、見た目の“増えていく残高”ではなく、出どころと登録の有無という骨の部分で判断したい。

すでに振り込んでしまった方へ

もし、もう入金していて、いま追加を求められているなら。気持ちは分かりますが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先です。「あと少し払えば出せる」は、この型がいちばん使ってくる言葉です。順序はこうなります。

  • ① 「税金」「手数料」「保証金」名目の追加入金は、そこで止める
  • ② やり取り(チャット・振込明細・画面)の記録を、消される前に残す
  • ③ 振り込んだ決済元(銀行・カード会社・送金業者)に、まず連絡する
  • ④ 警察(#9110)と消費生活センター(188)に相談する

私には個別の解決はできません。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが結局、いちばん確かです。

迷ったとき・不安なときの相談先 投資の勧誘を受けて不審に思ったら、金融庁の「詐欺的な投資に関する相談ダイヤル」(0570-050588/平日10〜17時)へ。被害が出ていない、悩んでいる段階の相談も受け付けています。もうけ話やお金のトラブル全般は、消費者ホットライン「188(いやや!)」で最寄りの消費生活センターにつながります(消費者庁の注意喚起)。すでに被害が疑われるなら、警察相談専用電話「#9110」も使えます。

この記事のまとめ

  • 「最初は少額出金できる→信用させて増額→出金時に税金・手数料・保証金で追加入金を要求」が、海外プラットフォーム型の出金トラブルの型
  • 画面の含み益は運営が書ける数字にすぎない。判断は「利益の出どころ」と「日本での登録の有無」で行う

本来、利益の税金を出金前に業者へ先払いする手順はない。追加入金を求められた時点で、いったん止めて、記録を残し、正規の窓口へ。それが順序です。