「2週間で763万円」と断定するFX自動売買EA商材ほど、肯定的な実績の裏付けが見当たらない型を、消費者庁・国民生活センターの一次情報で調べた
特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで調べた。「2週間で763万円」「実践者は全員、その日のうちに結果が出た」――FXの自動売買ツール(EA)を売る高額な情報商材に、こういう断定的な成功実績が添えられていることがある。ただ、その実績を確かめようとしても、売り手本人の発信以外に肯定的な声が見当たらない、ということがある。今号はこの型を洗った。(黒)
「2週間で763万円」という数字は、まず断定であることを確かめる
この型でまず目に入るのは、具体的すぎる金額と期間だ。「763万円」のように細かい数字が添えられると、逆に本当らしく見えてしまう。だが、将来の運用結果は、誰にも確実には分からない。確実でないものを確実であるかのように示すこと自体が、まず一つの論点になる。
この提供を受けて契約した場合、消費者契約法上は契約を取り消せる余地がある、という制度だ。「絶対」「必ず」という語を使っているかどうかは関係なく、不確実な事項を確実だと言い切った時点で、この論点に触れうる。
「著しく優良」に見せる表示も、別の法律が名前を付けている
断定的な成功実績は、広告表示そのものとしても論点になる。実際よりも良く見せる表示は、景品表示法が名前を付けている領域だ。
通信販売の形式で売られる情報商材については、特定商取引法にも同種の禁止規定がある。特定商取引に関する法律 第十二条(法務省・法令翻訳データベース)は「著しく事実に相違する表示」「実際のものよりも著しく優良…であると人を誤認させるような表示」を禁じている。断定的な成功実績には、こうした二重の規制網がかかっている。
で、その実績は、本人発信以外のどこで確認できるのか
ここからが、この型でもう一つ確かめておきたい点になる。「2週間で763万円」の実績を、購入者本人の投稿以外の場所で確認できるか。第三者のレビュー、公的な統計、あるいは同じ手法を使った別の利用者の声——探しても、そのどれも見当たらないことがある。
同じ資料は、情報商材の「投資に関するもの」の具体例として「FX、アービトラージ、バイナリーオプション」「FX投資用ソフト、自動売買ツール」を挙げている。EAという体裁を取った商材も、想定されている型の一つということになる。
「まず疑ってみる」という、公的機関の呼びかけ
実績が本人発信以外に見当たらないという事実そのものに、消費者庁も注意を促している。
「疑ってみる」というのは、感情の話ではなく手順の話だ。実績を裏付ける第三者情報を、購入前に自分で探せるかどうか。それだけで、この型の入口を一段見分けやすくなる。
「返金保証」も、法律上のクーリング・オフとは別物
断定的な実績とセットで、「稼げなければ返金する」という保証が添えられることもある。ここで確かめておきたいのは、その保証が法律上の権利なのか、事業者の任意の約束にすぎないのか、という違いだ。
つまり「返金保証」は、法律が用意した無条件の解除権ではなく、あくまで事業者側が自主的に付けた条件つきの約束だ。前出の国民生活センターの資料でも、「事業者の『100%元が取れる』『返金保証がある』…等の説明は守られない事例がみられるため、安易に信用しないように注意しましょう」と重ねて呼びかけている。
「ツール販売」という体裁が持つ、もう一つの境界線
EA(自動売買ツール)は「ソフトを買って使うだけ」という体裁を取ることが多い。この体裁そのものにも、確かめておきたい境界線がある。
誰でも自由に購入して使えるだけのソフトであれば、投資助言・代理業の登録は不要とされる。だが、そこに継続的な個別サポートやデータ提供が付いてくるなら、話は変わってくる。「ツールを売っているだけ」のはずが、実質は高額な継続サポート契約になっていないか。この境界線を、一度自分の目で確かめておいてほしい。
- 断定的な金額・期間の実績を、購入者本人の発信以外の第三者情報で確認できるか
- 「稼げなければ返金」という保証が、法律上のクーリング・オフではなく事業者の任意の約束であることを理解しているか
- ツール販売のはずが、継続的な個別サポート・データ提供が付いていないか
- 断定的な将来の利益を示されたうえで契約した場合、消費者契約法上の取消しの余地が残っていないか
- 家族や友人など、利害のない誰かに一度話してみたか
この記事のまとめ
- 「2週間で763万円」のような断定的な成功実績は、消費者契約法の「断定的判断の提供」・景品表示法の「優良誤認表示」に触れうる型である
- 実績の裏付けが本人発信以外に見当たらないのは、情報商材が「購入するまで内容を確かめられない」構造そのものに起因する
- 「返金保証」は法律上のクーリング・オフとは別物で、事業者の任意の約束にすぎない
断定的な数字を見たら、まず出どころと裏付けを確かめる。それだけで、防げる契約がある。(黒)