第402号黒岩検閲済 2026年7月27日 発行(不定期刊/前号:7月27日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|断定的成功実績×実績不在×返金保証なしの型

「2週間で763万円」と断定するFX自動売買EA商材ほど、肯定的な実績の裏付けが見当たらない型を、消費者庁・国民生活センターの一次情報で調べた

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黒岩警戒度

特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで調べた。「2週間で763万円」「実践者は全員、その日のうちに結果が出た」――FXの自動売買ツール(EA)を売る高額な情報商材に、こういう断定的な成功実績が添えられていることがある。ただ、その実績を確かめようとしても、売り手本人の発信以外に肯定的な声が見当たらない、ということがある。今号はこの型を洗った。(黒)

「2週間で763万円」という数字は、まず断定であることを確かめる

この型でまず目に入るのは、具体的すぎる金額と期間だ。「763万円」のように細かい数字が添えられると、逆に本当らしく見えてしまう。だが、将来の運用結果は、誰にも確実には分からない。確実でないものを確実であるかのように示すこと自体が、まず一つの論点になる。

消費者契約法が定める「断定的判断の提供」 「物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること」――消費者庁「逐条解説 消費者契約法」第4条第1項第2号より

この提供を受けて契約した場合、消費者契約法上は契約を取り消せる余地がある、という制度だ。「絶対」「必ず」という語を使っているかどうかは関係なく、不確実な事項を確実だと言い切った時点で、この論点に触れうる。

「著しく優良」に見せる表示も、別の法律が名前を付けている

断定的な成功実績は、広告表示そのものとしても論点になる。実際よりも良く見せる表示は、景品表示法が名前を付けている領域だ。

景品表示法・優良誤認表示 「実際のものよりも著しく優良であると示し…不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」――不当景品類及び不当表示防止法 第五条第一号(法務省・法令翻訳データベース)より

通信販売の形式で売られる情報商材については、特定商取引法にも同種の禁止規定がある。特定商取引に関する法律 第十二条(法務省・法令翻訳データベース)は「著しく事実に相違する表示」「実際のものよりも著しく優良…であると人を誤認させるような表示」を禁じている。断定的な成功実績には、こうした二重の規制網がかかっている。

で、その実績は、本人発信以外のどこで確認できるのか

ここからが、この型でもう一つ確かめておきたい点になる。「2週間で763万円」の実績を、購入者本人の投稿以外の場所で確認できるか。第三者のレビュー、公的な統計、あるいは同じ手法を使った別の利用者の声——探しても、そのどれも見当たらないことがある。

情報商材の構造的な検証しづらさ 「情報商材は購入するまでは内容を確かめることができないため、購入してみたら広告や説明と違ったというトラブルが絶えません」――国民生活センター「簡単に高額収入を得られるという副業や投資の儲け話に注意!」(2018年8月2日)より

同じ資料は、情報商材の「投資に関するもの」の具体例として「FX、アービトラージ、バイナリーオプション」「FX投資用ソフト、自動売買ツール」を挙げている。EAという体裁を取った商材も、想定されている型の一つということになる。

「まず疑ってみる」という、公的機関の呼びかけ

実績が本人発信以外に見当たらないという事実そのものに、消費者庁も注意を促している。

SNS上の「もうけ話」への注意喚起 「SNS上で勧誘を受けた場合は、まず疑ってみるようにしましょう」――消費者庁「SNSなどを通じた投資や副業といった『もうけ話』にご注意ください!」より

「疑ってみる」というのは、感情の話ではなく手順の話だ。実績を裏付ける第三者情報を、購入前に自分で探せるかどうか。それだけで、この型の入口を一段見分けやすくなる。

「返金保証」も、法律上のクーリング・オフとは別物

断定的な実績とセットで、「稼げなければ返金する」という保証が添えられることもある。ここで確かめておきたいのは、その保証が法律上の権利なのか、事業者の任意の約束にすぎないのか、という違いだ。

通信販売とクーリング・オフ 「インターネット通販やテレビショッピングなどの通信販売には、法律上のクーリング・オフ制度はありません」――国民生活センター「通信販売はクーリング・オフできません」(2024年1月)より

つまり「返金保証」は、法律が用意した無条件の解除権ではなく、あくまで事業者側が自主的に付けた条件つきの約束だ。前出の国民生活センターの資料でも、「事業者の『100%元が取れる』『返金保証がある』…等の説明は守られない事例がみられるため、安易に信用しないように注意しましょう」と重ねて呼びかけている。

「ツール販売」という体裁が持つ、もう一つの境界線

EA(自動売買ツール)は「ソフトを買って使うだけ」という体裁を取ることが多い。この体裁そのものにも、確かめておきたい境界線がある。

金融庁の監督指針が示す境界 「当該ソフトウェアの利用に当たり、販売業者等から継続的に投資情報等に係るデータ・その他サポート等の提供を受ける必要がある場合には、登録が必要となる場合」――金融庁「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」(投資助言・代理業)より

誰でも自由に購入して使えるだけのソフトであれば、投資助言・代理業の登録は不要とされる。だが、そこに継続的な個別サポートやデータ提供が付いてくるなら、話は変わってくる。「ツールを売っているだけ」のはずが、実質は高額な継続サポート契約になっていないか。この境界線を、一度自分の目で確かめておいてほしい。

迷ったとき用の一言 「763万円」の実績を、購入前に本人発信以外の場所で確認できるか。できないなら、それ自体が答えだと思っていい。
  • 断定的な金額・期間の実績を、購入者本人の発信以外の第三者情報で確認できるか
  • 「稼げなければ返金」という保証が、法律上のクーリング・オフではなく事業者の任意の約束であることを理解しているか
  • ツール販売のはずが、継続的な個別サポート・データ提供が付いていないか
  • 断定的な将来の利益を示されたうえで契約した場合、消費者契約法上の取消しの余地が残っていないか
  • 家族や友人など、利害のない誰かに一度話してみたか

この記事のまとめ

  • 「2週間で763万円」のような断定的な成功実績は、消費者契約法の「断定的判断の提供」・景品表示法の「優良誤認表示」に触れうる型である
  • 実績の裏付けが本人発信以外に見当たらないのは、情報商材が「購入するまで内容を確かめられない」構造そのものに起因する
  • 「返金保証」は法律上のクーリング・オフとは別物で、事業者の任意の約束にすぎない

断定的な数字を見たら、まず出どころと裏付けを確かめる。それだけで、防げる契約がある。(黒)