「勝率97%」という数字を入口に、無料動画を重ねて信頼をつくり、教材を買わせたあとさらに運用資金を求める勧誘の型
特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで調べた。今回洗ったのは、FX(外国為替証拠金取引)まわりでよく見る「勝率○○%」という数字の使われ方である。今号はこの件を洗いました。(黒)
「勝率97%」という数字から、話は始まる
SNSの広告や無料動画で「勝率97%超え」といった具体的な数字を見せられることがある。数字が細かいほど、なんとなく本当らしく見える。だが、その97%が何回の取引を数えた結果なのか、どの期間で区切ったのか、負けた回はどう扱われているのか——こちらの手で確かめるすべはたいてい無い。見せられた数字は、自分で検証できないかぎり、根拠としてはかなり弱いと考えていい。
無料の動画を、何本かに分けて見せられる
数字だけで終わらず、無料の動画コンテンツが何本かに分けて届く。一度に核心は明かされず、回を重ねるごとに「もう少し踏み込んだ話」が出てくる設計になっていることが多い。これ自体は珍しい売り方ではないが、当研究所は以前にも似た「段取り」で気持ちを温める型を洗っている。今回はその入口が「無料ツール」ではなく、検証しようのない勝率の数字である、という点が違う。
教材を買ったあとに、もう一段の出費が待っている
動画を重ねたあと、数十万円規模の自動売買ツールやスクールへの申し込みが案内される。ここまでは、これまで洗ってきた型と同じ流れだ。今回あらためて確認したいのは、この先である。教材やツールを購入したあと、さらに「これで実際に取引するための運用資金」の準備を求められるケースがある、という点だ。
国民生活センターには、FX自動売買システムの購入を勧められ、「もうからない」と伝えても販売側が引き下がらず、実際に損失が発生したという相談事例が寄せられている。教材費だけで終わらず、その先の運用でも実際にお金が動く――ここが、この型の一番の急所だと私は見ている。
数字でほどく——確実に増えるのは、誰の口座か
お金の流れを一度整理してみたい。勝率97%が本当かどうかは、こちらからは検証できない。一方で、確実に動くお金は二段ある。まず教材・ツール代。仮に一件30万円として、100人が申し込めば、その時点で3,000万円が売り手に入る。次に、購入後に求められる「運用資金」。これは利用者の口座から出ていくお金であり、そこから先が本当に増えるかどうかは、また別の話になる。
つまり「勝率97%」が本物かどうかとは無関係に、教材が売れた時点で売り手の利益はもう確定している。確実に増えるのは、利用者の投資口座ではなく、売り手の売上のほうだ——という構図になりやすい。「で、その利益の出どころは?」と一度問い直せば、動画の中の“成果”ではなく、申込者から集めた教材代とその先の運用資金に行き着くことが多い。
「絶対に儲かる」「必ず勝てる」といった言い切りは、法律の側からも問題になりうる。消費者契約法は、将来の変動が不確実な事項について「断定的判断を提供すること」を、契約を取り消せる場合がある行為として条文で定めている(消費者契約法第4条第1項第2号)。確実な勝率、と言い切る勧誘そのものが、まず立ち止まる理由になる。
こうした「儲け話」を入口にした情報商材のトラブルは、この数年、低い水準ではない。国民生活センターの統計では、情報商材に関する相談は2022年度に7,000件を超え、2024年度も4,000件を超える水準で推移している。勝率の数字を見せて信頼をつくる型は、けっして珍しいものではないということだ。
立ち止まるための、ゆるい確認
気合いで見抜こうとすると疲れる。私は「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思っている。一番効くのは、その場で決めないことだ。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにしておくだけで、急かす型の大半は空振りに終わる。そのうえで、
- 見せられた勝率・実績の数字は、自分の手で検証できるかどうかを基準にする
- 「教材を買えば終わり」と思わず、その先の運用資金の要求まで想定しておく
- 勧められた取引業者が国の登録を受けているか、金融庁の無登録業者に関する注意喚起で確かめる
- 利害のない家族や友人に、契約前に必ず一度話してみる
- 「今日だけ」「今なら」と急かされたら、その場で決めない
すでに教材やツールを購入し、追加の運用資金を求められている、あるいは払ってしまったという方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。順序はこうなる。追加の入金をいったん止める。動画・LINE・通話の記録を残す。支払った決済元に連絡する。そのうえで消費者ホットライン「188(いやや)」や消費生活センターに相談してほしい。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。
この記事のまとめ
- 「勝率○○%」という数字は、多くの場合こちらの手では検証できない
- 教材・ツール代に加えて「運用資金」の準備を求められる、もう一段の出費があり得る
- 確実に増えるのは利用者の口座ではなく、教材を売った時点の売り手の売上になりやすい
対策は結局のところ、その場で決めない・数字を自分で検証できるか確かめる・第三者に話す。この3つに尽きる。