友人からの個別LINE勧誘でクローズドなコミュニティへ誘い込み、著名アスリートを応援団に掲げて紹介するほど還元が増える型を、国民生活センター・金融庁の一次情報で調べた
特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで調べた。SNSに並ぶ華やかな投稿がきっかけで、知人や友人から個別にLINEで声をかけられ、気づけば外から見えないコミュニティの中にいた——という相談が増えている。今号はこの型を洗った。(黒)
入口は、知らない誰かではなく「知人」だった
広告ではなく、知人・友人からの個別のLINEメッセージ。この入口の作り方こそが、この型の一番の特徴だと私は見ている。知らない相手からの勧誘なら警戒できても、すでに信頼している相手からの誘いには、疑いの目が向きにくい。
誘われた先は、外から見えないコミュニティ
個別のやり取りのあと案内されるのは、招待された者だけが入れるクローズドなLINEグループだ。中では「元手が短期間で数倍になった」という体験談が飛び交う。ただ、外部からは中身を確認できない場に置かれた発言を、そのまま裏付けとして受け取っていいのか。まずそこを一度立ち止まって考えたい。
著名アスリートを「応援団」に掲げる
コミュニティの中で語られる信頼の材料のひとつが、著名なスポーツ選手が支援している、応援団に名を連ねている、という触れ込みだ。著名人の名前は、そこにいる全員がまだ確かめていない信用を、まとめて肩代わりする道具になる。金融庁も、こうした手口に繰り返し注意を促している。
国民生活センターの集計でも、SNSをきっかけとして著名人を名乗る・つながりがあるなどと勧誘される消費者トラブルの相談件数は、2021年度52件から2023年度1,629件へと急増している——国民生活センター「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る…消費者トラブルが急増」(国民生活センター・2024年)による。応援団の顔ぶれが本人の関与によるものかどうか、コミュニティの中では確かめようがない。
紹介が紹介を生む――倍々の計算をしてみる
元手を増やす話に加えて、人を紹介すると紹介料や還元が入る、という仕組みも用意されている。試しに、紹介の連鎖を数字で追ってみる。仮に1人が2人を新たに誘い、その2人がまたそれぞれ2人を誘う——という具合に10段階続くと、単純計算で2の10乗、1,024人分の連鎖にふくらむ計算になる。現実にそこまで続くかは別として、還元の原資がどこから出ているのか、一度数えてみる価値はある。
この仕組みが実際にどちらの枠組みに当たるかは、物品・役務を伴う取引なのか、金銭のやり取りだけで完結しているのかなど、実態によって変わる。ここでは断定はしない。ただ、「紹介するほど得をする」という誘い方そのものが、法律がわざわざ名前を付けて規律する対象になっている、ということだけは確かめておきたい。
運営の実体は、最後まで見えないまま
応援団も、紹介の仕組みも語られる一方で、運営している会社の名前、所在地、登録番号といった基本情報は、最後まで開示されないことがある。金融庁は、こうした無登録業者との取引について繰り返し注意を呼びかけている。
無料の応援団紹介、無料の紹介料という話が、最後は「出金できない」という一点に集まっていく。私はそう見ている。
巻き込まれないための、ゆるい行動ルール
気合いで見抜こうとすると疲れるので、私は「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思っている。一番効くのは、その場で決めないこと。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにするだけで、大半は防げる。そのうえで、
- 知人からの誘いでも、コミュニティの外側で裏付けを確認する
- 著名人の関与は、本人・公式発表など一次情報で確認できるかを見る
- 紹介料の原資が、運用益なのか新規の入金なのかを考えてみる
- 運営会社の名前・所在地・登録番号を、自分で調べてみる
この記事のまとめ
- 知人・友人からの個別LINE勧誘は、SNS広告よりも警戒されにくい入口になっている
- 紹介の連鎖は数段階で急激にふくらむ計算になり、還元の原資が新規入金である可能性を考える必要がある
- 著名人の起用、運営実体の不透明さ、出金停止は、複数の公的機関が共通して注意を呼びかけている組み合わせ
応援団の顔より先に、紹介料の出どころを確かめてほしい。(黒)