第384号黒岩検閲済 2026年7月24日 発行(不定期刊/前号:7月24日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|ヒアリング型価格設定×無登録投資助言の型

SNS広告の無料セミナーから個別相談に進むと、年収や貯金額を聞かれてから金額が決まる高額FX投資塾勧誘の型を、金融庁・国民生活センターの一次情報で調べた

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黒岩警戒度

SNS広告から無料の動画セミナーに登録すると、そのあとで「個別相談」に案内されることがある。ここまでは、まあよくある導線だ。気になったのはその先だった。個別相談で年収や貯金額を聞かれ、そのやり取りが終わったあとに、初めて参加費が提示される。しかも、同じ内容のはずなのに、提示される金額は人によって違うらしい。個別の事業者・塾名は挙げない。案件をまたいで現れる、勧誘の一つの型として見ていく。今号はこの「金額があとから、しかも人によって決まる」型を、FX自動売買(EA)を謳う投資塾を例に調べた。

入口は無料セミナー、値段は個別相談のあとで決まる

この型の基本形はこうだ。まずSNS広告から無料の動画セミナーに登録させる。中身は「自動売買ツールがあれば、経験がなくても運用できる」という趣旨の説明が多い。ここまでは無料なので、警戒心はまだそれほど強くない。次に、個別の電話相談やオンライン面談に進む。そこで聞かれるのが、年収・貯金額・投資に回せる余力といった、こちらの経済状況だ。

参加費は、この個別相談が終わったあとに提示される。しかも公開情報として「いくら」とは出ておらず、10万円から100万円までかなりの幅がある、という体験談が見受けられる。つまり、こちらの懐具合を先に把握してから、出せそうな金額を提示している——そう見える構造になっている。

値段が「あとから、人によって」決まる契約は要注意 商品やサービスの値段が最初から公開されておらず、こちらの経済状況を聞き取ったあとに個別に提示される場合、それは「払える額」を基準に決められている可能性がある。国民生活センターも、無料セミナーのあとの個別相談で収入状況を聞かれ、それに応じた高額契約を結ばされた事例を、投資とは別分野(就職活動サポート契約)で公表している。“無料”セミナーだけのつもりが…高額な就活サポート契約にご注意!(国民生活センター)。分野は違っても、「無料の入口→個別相談での聞き取り→高額な個別提示」という型そのものは同じだ。

「実績」は見せられるが、確かめる手段がない

次に気になったのが実績の示し方だ。「5年で2億円」といった経歴が語られる一方で、取引履歴や運用データそのものは公開されないことが多い。使っている自動売買ツールも、年ごとに乗り換えているケースが見られる。ツールを変える理由自体は説明可能かもしれないが、外からは「前のツールの成績がどうだったのか」を検証できないまま、次のツールの話に移ってしまう。

実際、国民生活センターには、SNSの無料セミナーやLINEグループを通じてFX取引を勧められ、業者から高額な入金を求められたという相談が寄せられている。SNS上の投資グループで勧誘される詐欺的なFX取引トラブル(国民生活センター)には、「SNSの無料セミナーやLINEグループを通じて、FX取引を勧められました。実際に取引を開始すると、専用のFXアプリが無く、業者が直接500万円以上の投資を要求。500万円を送金後、160万円の利益が必要と指示され、さらに資金を要求された」という事例が紹介されている。同センターは「SNSのグループやSNS広告の無料セミナーに注意」「根拠のない高い利益を約束する勧誘に応じない」「無登録業者との取引は行わない」とアドバイスしている。

で、その利益の出どころは? 運用が本当にうまくいっているなら、取引履歴を見せることに支障はないはずだ。見せられないのだとしたら、見せられない理由のほうを聞いてみてほしい。

「投資の助言」は、本来は登録が必要な業務である

もう一つ、法制度の面から確認しておきたい点がある。個別具体的な投資判断について、報酬を得て助言を行う業務は、金融商品取引法上「投資助言・代理業」として金融庁への登録が必要になる。金融庁のガイドブックには「投資顧問契約に基づき、有価証券の価値等や金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に関し助言を行い、かかる投資助言業務に関し報酬の支払を受ける場合、投資助言会社は、投資助言・代理業の登録が必要となります」とある(投資運用業等 登録手続ガイドブック/金融庁)。金融庁は、無登録で金融商品取引業を行っているとして財務局が警告書を発出した業者名を、別途公表もしている。

この投資塾が、法律上の「投資助言業務」に厳密に当てはまるかどうかは、個別の実態次第で私には判断できない。ただ、少なくとも「投資について有償で個別に助言する業務には、本来は登録という手続きがある」ということ自体は、覚えておいて損はない一般知識だと思う。相手が登録業者かどうかは、金融庁のサイトで確認できる。

返金されるのは「参加費」だけ、投資に回した金は対象外

最後に契約条件の話をしておきたい。この手の投資塾では、参加費(コンサル料)については返金に応じる場合があっても、そのお金を元手にFXへ投じた投資金そのものは返金対象外、という設計になっていることが多い。仮に運用がうまくいかず投資元本を失っても、「それは相場の結果であって、こちらの責任ではない」という切り分けだ。

特定商取引法には、契約の類型によっては法定書面の交付から一定期間内なら無条件で解除できる「クーリング・オフ」の仕組みがある(特定商取引法ガイド/消費者庁)。ただし、この投資塾の契約がどの類型に当たり、クーリング・オフが使えるのかどうかは、契約書の中身と勧誘の経緯次第で変わる。ここも私が断定できる話ではない。だからこそ、契約する前に「参加費以外にも返金される範囲はどこまでか」を、書面で確認しておいてほしい。口頭の説明だけで納得しないことだ。

迷ったとき用の一言 「その値段は、私にだけの特別価格ですか?」と聞いてみてほしい。本当に一律の商品・サービスなら、答えはすぐ「いいえ」のはずだ。歯切れが悪ければ、それも一つの答えだと思う。

巻き込まれないための、ゆるい行動ルール

気合いで見抜こうとすると疲れるので、私は「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思っている。一番効くのは、その場で決めないこと。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにするだけで、大半は防げる。そのうえで、

  • 個別相談で年収・貯金額を聞かれた時点で、一度立ち止まる
  • 運用実績は、取引履歴という一次データで確認できるかを基準にする
  • 相手が金融商品取引業(投資助言・代理業等)の登録業者かどうか、金融庁のサイトで確かめる
  • 「返金される範囲はどこまでか」を、契約前に書面で確認する
  • 家族や友人など、利害のない誰かに必ず一度話してみる

この記事のまとめ

  • 無料セミナー→個別相談で経済状況を聞き取り→個別の高額提示、という型がある
  • 実績は語られても、取引履歴という一次データでは検証できないことが多い
  • 投資の個別助言は本来登録が必要な業務であり、返金範囲も契約前に書面で確認したい

対策は結局のところ、その場で決めない・一次データで確かめる・第三者に話す。この3つに尽きる。