第379号黒岩検閲済 2026年7月23日 発行(不定期刊/前号:7月23日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|完全放置×将来シミュレーション矛盾の型

「完全放置で月利20%」とうたう自動売買の勧誘が、将来シミュレーションの数字と規約の注記で正反対のことを言う型を、金融庁の一次情報で調べた

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黒岩警戒度

今号も、SNSや広告で見かける自動売買の勧誘を洗った。「完全放置で月利20%」「銀行のようなもの」とうたう案件で、無料の登録の先に、数十万円規模のコミュニティ参加費が用意されている型だ。特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、今号はこの広告に出てくる数字そのものを調べた。

「銀行のようなもの」という言葉の選ばれ方

「銀行」という言葉は、預けたら安全という感覚とセットで記憶されている。実態はAIが為替取引を繰り返す金融商品なのに、あえて銀行を連想させる言葉を選ぶのは、警戒をゆるめるための入口設計だと私は見ている。

親しみやすい言葉と、無料という入り口。ここまでは、これまでも繰り返し見てきた型と同じだ。ただ、今回はその先に置かれた数字のほうが気になった。

「無料」の先に用意されているもの

登録は無料と強調される。だが、説明の動画を最後まで見ると、コミュニティへの参加費として20万円台後半から30万円近い金額が案内される、という段取りになっている。無料から有料への切り替えが、動画の終わりという一つの場面に集約されている。

気になった点 判断を迫られる場面が一つに絞られているぶん、その場の勢いで決めやすい設計になっている、と私は見ている。

月利20%を、まず割り算する

「完全放置で月利20%」という数字は、複利で計算してみるとよく分かる。1か月で2割増えるなら、1.2を12回かける計算になる。1.2の2乗は1.44、その2乗が2.0736、さらにその2乗が約4.2998。1.2の12乗は、この4.2998に1.2の4乗(2.0736)をかけて、およそ8.9倍になる。

つまり、月利20%が本当なら、元手がいくらであれ、1年でおよそ8.9倍になっている計算だ。人を集めて参加費を取るより、黙って自分の金だけを回したほうが、よほど早く大きな資産になる。

で、その利益の出どころは?——今回、もう一つ気になる数字があった。

将来シミュレーションの数字を、母数抜きで見せられる

同じ広告には、将来のシミュレーションとして「1年で90万円増える」「3年で7000万円に成長する」という数字も添えられている。だが、この90万円が元手30万円に対してなのか、300万円に対してなのかで、意味はまったく変わる。7000万円についても、母数となる元手の額がどこにも書かれていない。

具体的な金額の端数や桁数は、いかにも本物の実績のように見える。だが、元手・期間・母数のどれか一つでも欠けていれば、その数字は比較のしようがない。月利20%を複利で計算した8.9倍という数字と、この「1年で90万円」という数字を並べても、そもそも比べる土台がない。

「完全放置で増える」と、規約の注記が同居する

広告の本文は「完全放置で増える」という前提で書かれている。ところが、同じページの注記には「投資額を上回る損失を被る可能性がある」という一文が置かれている。片方は損をしない前提、もう片方は元本を超えて減る可能性を認める前提だ。同じ商品の説明として、この二つは並び立たないはずだ、と私は見ている。

断定的な言い切りで儲け話を勧誘すること自体、金融庁がすでに問題として挙げている行為にあたる。

断定的判断の提供の禁止 「どんな金融商品であっても『必ず○○円まで値上りする』『この取引をすれば○○円儲かる』といった不確かなことを確実であるかのように伝えたり、確実と誤解させるようなことを説明して勧誘することは法令で禁止されています。」——金融庁「"オイシイ投資話"にご注意!!!!」より

「完全放置で増える」という言い切りと、注記に書かれた「損失もある」という留保。この二つが同じ広告の中に同居しているという時点で、もう答えは出ているように私には見える。

運営の実態を確かめる、という一手

会社名や電話番号、取引ロジックの詳細が書かれていない案件も、この型ではよく見かける。日本国内で金融商品取引業を行うには、登録が必要になる。

無登録業者への注意喚起 「日本で登録を受けずに金融商品取引業や暗号資産交換業を行うことは違法です。」「登録を受けていない『無登録業者』は、投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず、登録を受けている業者と同等の態勢が整っていない可能性が高いといえます。」——金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」より

登録の有無は、金融庁のサイトで確認できる。名乗りやAIという言葉の有無ではなく、まずこの一点を確かめてほしい。

SNS発の勧誘トラブルは、件数としても増えている

今回調べた型そのものの統計ではないが、SNSや発信者をきっかけにした投資の話が、公的な窓口に持ち込まれる件数として大きく増えている、という流れの中にこの型もあると私は見ている。

SNSきっかけの相談件数 SNSをきっかけとした著名人なりすまし等の金融商品・サービスに関する相談件数:2021年度52件→2022年度170件→2023年度1,629件(前年度比約9.6倍)——国民生活センター「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」(2024年5月29日)より

SNS型の投資・ロマンス詐欺全体の認知件数でも、同じ増加傾向が確認できる。これも特定の事業者を名指ししたものではなく、全体の一般的な傾向として引用している。

SNS型投資詐欺の認知件数 「SNS型投資詐欺の認知件数は9,538件(+3,125件、+48.7%)、被害額は1,274.7億円(+403.6億円、+46.3%)」——警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」(令和8年2月13日公表)より
迷ったとき用の一言 将来のシミュレーションを見せられたら、まず元手の額を聞いてほしい。答えがぼやけたまま金額だけが独り歩きしているなら、それ自体を一度疑っていい。
  • 「完全放置」「自動で増える」という言葉の隣に、損失の可能性を認める注記がないか
  • 将来シミュレーションの数字に、元手・期間・母数が添えられているか
  • 運営会社名・登録番号・取引ロジックが確認できるか
  • 「無料」の先で、どんな名目でいくらの費用が案内されるか、事前に調べたか
  • 家族や友人など、利害のない誰かに一度話してみる

この記事のまとめ

  • 「完全放置で月利20%」を複利で計算すると1年でおよそ8.9倍になる計算で、実際の増加額とはそもそも比べる土台がない
  • 「完全放置で増える」という言い切りと、規約の「元本を上回る損失」という注記が同居している
  • 断定的な利益の言い切りは、金融庁がすでに禁止行為として挙げている

数字は並べられるほど本物に見える。だが、母数のない数字は、まだ何も語っていない。(黒)