「完全放置で月利20%」とうたう自動売買の勧誘が、将来シミュレーションの数字と規約の注記で正反対のことを言う型を、金融庁の一次情報で調べた
今号も、SNSや広告で見かける自動売買の勧誘を洗った。「完全放置で月利20%」「銀行のようなもの」とうたう案件で、無料の登録の先に、数十万円規模のコミュニティ参加費が用意されている型だ。特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、今号はこの広告に出てくる数字そのものを調べた。
「銀行のようなもの」という言葉の選ばれ方
「銀行」という言葉は、預けたら安全という感覚とセットで記憶されている。実態はAIが為替取引を繰り返す金融商品なのに、あえて銀行を連想させる言葉を選ぶのは、警戒をゆるめるための入口設計だと私は見ている。
親しみやすい言葉と、無料という入り口。ここまでは、これまでも繰り返し見てきた型と同じだ。ただ、今回はその先に置かれた数字のほうが気になった。
「無料」の先に用意されているもの
登録は無料と強調される。だが、説明の動画を最後まで見ると、コミュニティへの参加費として20万円台後半から30万円近い金額が案内される、という段取りになっている。無料から有料への切り替えが、動画の終わりという一つの場面に集約されている。
月利20%を、まず割り算する
「完全放置で月利20%」という数字は、複利で計算してみるとよく分かる。1か月で2割増えるなら、1.2を12回かける計算になる。1.2の2乗は1.44、その2乗が2.0736、さらにその2乗が約4.2998。1.2の12乗は、この4.2998に1.2の4乗(2.0736)をかけて、およそ8.9倍になる。
つまり、月利20%が本当なら、元手がいくらであれ、1年でおよそ8.9倍になっている計算だ。人を集めて参加費を取るより、黙って自分の金だけを回したほうが、よほど早く大きな資産になる。
で、その利益の出どころは?——今回、もう一つ気になる数字があった。
将来シミュレーションの数字を、母数抜きで見せられる
同じ広告には、将来のシミュレーションとして「1年で90万円増える」「3年で7000万円に成長する」という数字も添えられている。だが、この90万円が元手30万円に対してなのか、300万円に対してなのかで、意味はまったく変わる。7000万円についても、母数となる元手の額がどこにも書かれていない。
具体的な金額の端数や桁数は、いかにも本物の実績のように見える。だが、元手・期間・母数のどれか一つでも欠けていれば、その数字は比較のしようがない。月利20%を複利で計算した8.9倍という数字と、この「1年で90万円」という数字を並べても、そもそも比べる土台がない。
「完全放置で増える」と、規約の注記が同居する
広告の本文は「完全放置で増える」という前提で書かれている。ところが、同じページの注記には「投資額を上回る損失を被る可能性がある」という一文が置かれている。片方は損をしない前提、もう片方は元本を超えて減る可能性を認める前提だ。同じ商品の説明として、この二つは並び立たないはずだ、と私は見ている。
断定的な言い切りで儲け話を勧誘すること自体、金融庁がすでに問題として挙げている行為にあたる。
「完全放置で増える」という言い切りと、注記に書かれた「損失もある」という留保。この二つが同じ広告の中に同居しているという時点で、もう答えは出ているように私には見える。
運営の実態を確かめる、という一手
会社名や電話番号、取引ロジックの詳細が書かれていない案件も、この型ではよく見かける。日本国内で金融商品取引業を行うには、登録が必要になる。
登録の有無は、金融庁のサイトで確認できる。名乗りやAIという言葉の有無ではなく、まずこの一点を確かめてほしい。
SNS発の勧誘トラブルは、件数としても増えている
今回調べた型そのものの統計ではないが、SNSや発信者をきっかけにした投資の話が、公的な窓口に持ち込まれる件数として大きく増えている、という流れの中にこの型もあると私は見ている。
SNS型の投資・ロマンス詐欺全体の認知件数でも、同じ増加傾向が確認できる。これも特定の事業者を名指ししたものではなく、全体の一般的な傾向として引用している。
- 「完全放置」「自動で増える」という言葉の隣に、損失の可能性を認める注記がないか
- 将来シミュレーションの数字に、元手・期間・母数が添えられているか
- 運営会社名・登録番号・取引ロジックが確認できるか
- 「無料」の先で、どんな名目でいくらの費用が案内されるか、事前に調べたか
- 家族や友人など、利害のない誰かに一度話してみる
この記事のまとめ
- 「完全放置で月利20%」を複利で計算すると1年でおよそ8.9倍になる計算で、実際の増加額とはそもそも比べる土台がない
- 「完全放置で増える」という言い切りと、規約の「元本を上回る損失」という注記が同居している
- 断定的な利益の言い切りは、金融庁がすでに禁止行為として挙げている
数字は並べられるほど本物に見える。だが、母数のない数字は、まだ何も語っていない。(黒)