第371号黒岩検閲済 2026年7月21日 発行(不定期刊/前号:7月21日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|YouTube発信×個別相談アップセルの型

顔を隠したまま実績を語るYouTube発信者が、電子書籍とZoom個別相談を経て数十万円〜130万円のアフィリエイト講座契約へ進める型を、消費者庁・国民生活センターの一次情報で調べた

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黒岩警戒度

「YouTubeで在宅ワークの相談に乗っている、という発信者に興味を持ったのですが」という相談が届いた。詳しく聞くと、動画では顔を隠したまま実績を語り、LINE登録者には無料の電子書籍を配っている。そこからセミナー、Zoom個別相談と進み、最終的に数十万円から130万円のアフィリエイト講座を勧められたという。個別の発信者を検証する紙面ではないので、今号はこの流れそのものを「型」として洗ってみた。

どうしてこの型は「電子書籍」から始まるのか

いきなり高額の話はしない。まず無料の電子書籍を渡し、次に無料セミナー、そこから個別相談へと段階を踏む。一段ごとにハードルを上げていく設計だ。入口が軽いほど、途中でやめる心理的な抵抗は小さくなる。で、その先に何があるのか。順に見ていきたい。

実績は「登録者数」と「スクリーンショット」だけ

語られる実績は、チャンネル登録者数と、収益を示すとされる画面のスクリーンショットが中心になりやすい。第三者が確認できる裏付けではない。数字そのものは、こちらの手元では検証のしようがない、というのが実情だ。

電子書籍で「基礎知識」を渡し、信頼を積む

「アフィリエイトの基本」といった体裁の電子書籍を無料で渡す段階がある。ここでは特に金銭のやり取りは発生しない。むしろ無料で有益な情報をもらった、という印象だけが残る。信頼の土台は、まさにこの「対価を求めない段階」で作られる。

セミナーの「特典」でさらに距離を縮める

次に「無料セミナー」が案内され、参加すると複数の特典が付いてくる、という運びになりやすい。ここでもまだ金額の話は出てこない。距離が縮んだころに、ようやく次の段階へ進む案内が来る。

Zoom個別相談で、収入や貯蓄を聞かれる

個別相談の場で、現在の収入や貯蓄について尋ねられることがある。ここで渡した情報が、あとで提示される金額の根拠になっている可能性がある。実際、消費者庁が公表した別の事例でも、コンサルティング契約の勧誘過程で消費者の資力に応じたやり取りが確認されている。

一次情報:似た構造の摘発事例 消費者庁は令和7年12月、在宅ワークの求人をきっかけに高額なコンサルティング契約(44万円〜52万8000円)を結ばせた事業者について、「消費者の利益を不当に害するおそれのある行為(断定的判断の提供)を行っていた」として消費者安全法に基づく注意喚起を公表している。令和7年6月にも「アフィリエイトは初心者でも簡単に稼ぐことができる」とうたい高額サポートプランを契約させた事業者について、同種の注意喚起が出ている。今回の相談とまったく同じ事業者ではないが、SNS発信→高額なアフィリエイト・副業サポート契約という流れそのものは、繰り返し公表されている構造である。

そのあとに出てくる金額——80万から130万

ここまで来て、はじめて具体的な金額が提示される。今回の相談では80万円のプランと130万円のプランが示されたという。無料で始まった話が、最後にまとまった金額へ着地する——この落差の大きさそのものが、この型の特徴だと私は見ている。

数字で見る、この講座の「元」の取り方

130万円を、講座で教わるというアフィリエイト報酬だけで回収するとしたらどうなるか。仮に毎月5万円の利益を安定して出せたとしても、130万円 ÷ 5万円 で26か月、2年以上かかる計算になる。しかも月5万円を初心者が最初から安定して稼げる保証はどこにもない。講座代を払った時点で、収支はすでに130万円のマイナスから始まる。「稼げるようになったら回収できる」という話は、その回収がいつ・いくらで実現するのか、数字で示されて初めて検討に値する。

一次情報:業務提供誘引販売取引という枠組み 特定商取引法には、「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で誘い、仕事に必要だとして金銭負担を負わせる取引を規律する「業務提供誘引販売取引」という区分がある。この区分に該当する取引では、書面を受け取った日から20日間のクーリング・オフが認められている。一般的な訪問販売のクーリング・オフ期間(8日間)より長い。今回のような勧誘がこの区分に該当すると決めつけることはできないが、契約前に「これは何という取引区分にあたるのか」「クーリング・オフは何日か」を確認する価値はある。

クレジットカードと「借りてでも」という圧力

高額な契約は、その場でのクレジットカード決済を求められることが多い。国民生活センターの調査でも、副業契約をめぐる相談の中に「事業者から消費者金融で借りることを促され、なかには無職や学生でも借りられるようにするために、虚偽の申告を行うように指南される事例」があったと報告されている。さらに消費者庁は令和6年2月、遠隔操作アプリで消費者のスマホ画面を共有しながら複数の消費者金融に借入申請をさせ、副業サポート代金として送金させた事業者についても注意喚起を出している。手持ちの金額で足りないとき「借りてでも」という提案が出てきたら、そこは一度立ち止まってほしい。で、その借金は、何を回収する当てで返す計画になっているのか。

この型に共通する狙い 電子書籍→セミナー→個別相談という段階を踏むほど、「ここまで進んだのだから」という気持ちが生まれやすくなる。狙いはおそらく、金額を提示する前に十分な信頼と後戻りしにくさを積んでおくことだと私は見ている。金額そのものより、そこに至る「段階の作り方」を先に知っておくほうが役に立つ。
  • 語られる「実績」は、自分の手で確かめられるものかどうかを基準にする
  • 個別相談で収入・貯蓄・借入余力を聞かれたら、その情報が何に使われるかを意識する
  • 提示された金額が、この取引区分・クーリングオフ日数と一致しているかを確認する
  • その場でのカード決済・「借りてでも」という提案には、その場で応じない
  • 家族や友人など、利害のない誰かに一度話してみてほしい

この記事のまとめ

  • 無料の電子書籍・セミナー・Zoom個別相談と段階を踏み、最後に数十万円〜130万円の講座契約に着地する型がある
  • 個別相談で聞かれる収入・貯蓄が、提示金額の根拠になっている可能性がある
  • 特定商取引法の「業務提供誘引販売取引」に該当する場合、クーリング・オフは20日間認められる

結局のところ、その場で決めない・自分で確かめる・第三者に話す。この3つに尽きる。