第146号黒岩検閲済 2026年6月16日 発行(不定期刊/前号:6月16日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|ネットワーク商法の型

「健康と収入を両立できる」と誘うネットワーク商法の型を、お金の流れと解約制度でほどく

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黒岩警戒度

「健康と収入を両立できる」。サプリメントや化粧品を入り口にした勧誘で、よく使われる言い回しだ。商品そのものは実在して、手に取れる。だからこそ「物が届くなら詐欺ではないだろう」と、財布のひもがゆるみやすい。今号は特定の会社の話ではなく、この種の勧誘に共通する「型」を、お金の流れと、抜けるときの制度から淡々とほどいてみたい。

まず、これは法律でいう何にあたるのか

商品を買って会員になり、別の人を会員として紹介すると報酬が入る。この仕組みは、法律上「連鎖販売取引」と呼ばれる。世間でいうマルチ商法・ネットワークビジネスのことだ。違法な仕組みそのものではない。ただ、勧誘の仕方や説明には特定商取引法で細かいルールがかかっている。

消費者庁の解説では、連鎖販売取引は「他の人を勧誘して入会させれば報酬が得られる(特定利益)」と誘い、入会のために「商品の購入や登録料などの負担(特定負担)」を伴う取引、と整理されている(消費者庁「連鎖販売取引-特定商取引法ガイド」)。要するに、「紹介で稼げる」と「まず自分が払う」がセットになっていたら、名前が何であれこの型だと思っていい。

お金の流れを、割り算で追ってみる

この型では、会員が毎月いくらかの商品を自分で買い続けるのが前提になっていることが多い。仮に月2万円としよう。それだけで1年で24万円。入会の登録料や初回のまとめ買いが乗れば、初年度の負担はもっと膨らむ。報酬は「紹介した相手の購入額の1〜2割」といった形で示されることが多い。

ここで一度、立ち止まってほしい。あなたに入る1〜2割の報酬は、どこから出ているのか。商品が新しく価値を生んだわけではない。その原資は、後から入った人が払った自己購入や登録料だ。つまり、自分の月々の出費を取り戻すには、自分の下に何人もの人が入り、その人たちも毎月買い続けてくれないと釣り合わない。

では、その人たちの出費は、さらにその下の誰かが埋めることになる。で、その利益の出どころは?――こう問い直すと、儲けの話というより、負担を下へ下へと送っていく構造が見えてくる。紹介が止まれば、残るのは毎月の自己購入だけ、ということになりやすい。

「商品が実在する」と「割に合う」は別の話 サプリや化粧品そのものが本物かどうかと、副業として元が取れるかどうかは、分けて考えたい。物が届くことは、毎月の自己購入と紹介ノルマが割に合うことを保証しない。健康の話と収入の話を、いったん別々の紙に書き出してみてほしい。

「絶対もうかる」と言われたら、そこが境目

連鎖販売取引そのものは違法ではない。だが、勧誘のときに事実と違うことを告げたり(不実告知)、実際よりも著しく有利だと誤認させる表示をすることは、特定商取引法で禁じられている(同・消費者庁ガイド/同法第34条・第36条)。「絶対にもうかる」「誰でも簡単に稼げる」といった言い方は、この規制に触れうる表現だ。

だから、断定的に「儲かる」と押してくる勧誘は、それ自体が黄信号になる。本当に確かな話なら、わざわざ人を募らずとも黙って続けているはずだ。私はそう見ている。

誘ってくるのが「友人」だから、断りにくい

この型がやっかいなのは、声をかけてくるのが見知らぬ業者ではなく、友人・知人であることが多い点だ。国民生活センターも、若い世代を中心に、友達や知り合いから「人に紹介すれば報酬を得られる」と誘われて契約するトラブルが目立つと注意を促している(国民生活センター「若者に広がる『モノなしマルチ商法』に注意!」2019年)。

相談件数は年により波があるが、マルチ取引に関する相談は近年も毎年数千件規模で寄せられている(国民生活センター「マルチ取引(各種相談の件数や傾向)」)。消費者庁の白書でも、20歳代の相談の比率が以前より大きく高まっていることが示されている(消費者庁「令和2年版消費者白書」)。関係そのものが勧誘の道具になっている、というのが少し怖いところだ。

もう契約してしまった人へ──抜ける制度はある

すでに契約してしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。連鎖販売取引には、抜けるための制度が法律で用意されている。慌てて毎月の購入を続ける前に、ここを確かめてほしい。

  • 契約書面を受け取った日から数えて20日以内なら、クーリング・オフで契約をやめられる(商品を使っていても可)
  • 20日を過ぎても、将来に向かって中途解約し、会員をやめることはできる
  • 入会後1年未満で、引き渡しから90日以内・未使用・未再販売などの要件を満たす商品は、解約に伴い購入価額の90%の返金を求められる
  • クーリング・オフの通知は、書面のほか電子メール等の記録でも行える

制度の詳しい条件は消費者庁のガイドに書かれている。判断に迷うときは、自分だけで抱えず、消費者ホットライン「188(いやや)」に一度かけてほしい。私には個別の解決はできない。最終的な判断は、正規の窓口に委ねるのが一番確かだ。

迷ったとき用の一言 「健康にいい」と「稼げる」を同時に勧められたら、紙を2枚に分けて、収入の話だけを数字で書き出してみてほしい。毎月いくら払い、元を取るには何人を継続させる必要があるのか。割り算が無理だと言うなら、それが答えだと思う。

この記事のまとめ

  • 「健康と収入の両立」をうたう勧誘は、紹介報酬+自己購入がセットなら連鎖販売取引の型。報酬の原資は後から入った人の負担になりやすい
  • 断定的に「絶対もうかる」と押す勧誘は法令上の問題になりうる。契約後もクーリング・オフ20日・中途解約・返品(90%返金)の制度がある

商品が実在することと、副業として割に合うことは別の話。立ち止まって数字で確かめ、迷ったら188へ。それだけ覚えておいてほしい。