第145号黒岩検閲済 2026年6月16日 発行(不定期刊/前号:6月16日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|高額商材の型

「月利10〜30%・月50万円」と謳う高額FX教材の型を、お金の流れでほどく

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黒岩警戒度

「月利10〜30%」「月50万円は固い」とうたって、高額な教材やマニュアル、自動で売買してくれるというツールを売る——そういう型の勧誘を、今号は洗った。商品名はどれでもいい。私が見ているのは、案件をまたいで繰り返し出てくる「売り方の骨格」のほうである。で、その利益の出どころは? そこから順にほどいていきたい。

まず、「月利10〜30%」を割り算でほどく

数字は、煽られる前に自分の手で確かめられる。月利というのは「1か月で元手が何割増えるか」のことだ。仮に月利20%として、複利で1年回したらどうなるか。1.2を12回かける。1.2×1.2×……と続けると、おおよそ8.9倍になる。元手100万円が1年で約890万円、という計算だ。

月利10%でも1.1を12回かけて約3.1倍。月利30%なら1.3を12回で約23倍になる。つまり「月利10〜30%」を額面どおり受け取ると、1年で元手が3倍から23倍に膨らむ運用、という話になる。

数字でほどく(電卓で再現できる形) 月利20% → 1.2 を 12 回かける ≒ 8.9 倍。100万円が1年で約890万円。
そんな運用が本当に手元にあるなら、人を募って教材を売る手間をかけず、黙って自分の金で回しているはずだ。私はそう見ている。

もちろん、ある月だけ20%増えることはあるだろう。問題は「毎月」「安定して」その利回りが続く、という前提のほうだ。そこは割り算が静かに無理を教えてくれる。

売っているのは「成果」ではなく「教材」だ

ここがこの型のいちばんの肝だと思っている。広告は「稼げる」と語る。だが実際に売買されているのは、運用の成果ではなく、教材・マニュアル・ツールそのものである。お金の流れを一本の線で書くと、こうなる。買い手のお金は、相場ではなく、まず売り手の「販売代金」に入る。

言い換えると、売り手の確実な利益は、買い手が相場で勝つかどうかとは関係なく、教材が一本売れた時点で確定している。買い手が勝っても負けても、売った側の代金は戻らない。では、その「月50万円」という数字は、誰の実績なのか。自分で検証できない他人の画面の数字を、根拠として受け取っていないか。

「努力が足りない」という逃げ道があらかじめ用意されている

分厚いマニュアルや「数百ページの解説」がセットになっていることがある。情報量そのものは悪ではない。ただ、量が多いほど「使いこなせないのは、あなたの努力が足りないから」という説明が成り立ちやすくなる、という構造には気づいておきたい。うまくいかない理由を、商品側ではなく買い手側に置けるようになっている、ということだ。

国民生活センターも、この種の相談を早くから記録している。「簡単に高額収入を得られるという副業や投資の儲け話に注意!」(同センター・2018年8月2日公表)では、高収入をうたう広告から高額契約に至り「実際は説明と異なり儲からない」という相談が、2013年度の872件から2017年度には6,593件へと約7.6倍に増えたとされている。情報商材をめぐる相談は、その後も高い水準で推移している。数字の出どころと年度は、必ず一次資料で確かめてほしい。

法律で見ると、どこが引っかかるのか

「必ず儲かる」「月利○%は確実」といった言い切りは、法令の世界では特別に扱われている。金融商品取引法は、価格が必ず上がる・下がるといった断定的な判断を示して勧誘することを禁じている。消費者庁も金融庁も、繰り返し「うまい話には用心を」と注意を促してきた。断定で迫ってくること自体が、立ち止まるべきサインだと考えていい。

もう一つ、見落とされやすい点がある。日本に住む人を相手にFX取引や投資助言を業として行うには、金融商品取引法上の登録が必要だ。金融庁は「無登録業者との取引は要注意!!」で、「日本で登録を受けずに金融商品取引業……を行うことは違法です」とはっきり書いている。ツールや教材という形をとっていても、勧誘・運用の中身によっては登録の要否が問われうる。登録業者かどうかは金融庁の事業者一覧で確認できる。あわせて、SNSや広告経由のもうけ話については消費者庁の「SNSなどを通じた投資や副業といった『もうけ話』にご注意ください」も読んでおきたい。

この型に共通する狙い 派手な数字で気を引き、分厚い教材で「努力が足りない」の逃げ道を用意し、買い手の検証が及ばないところで代金だけを確定させる。形は違っても、狙いは「考える時間と、確かめる手段を奪う」ことだ。急かされている、自分では裏が取れない——そう感じたら、それ自体が黄信号だと思っている。

立ち止まるための、ゆるい確認

気合いで見抜こうとすると疲れる。だから「いつものクセ」にしてしまうのがいい。一番効くのは、その場で買わないこと。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにするだけで、大半は防げる。そのうえで、次の点を一度たどってみてほしい。

  • うたわれた利回りを、自分で割り算してみる(月利は1.◯を12回かけて1年に直す)
  • 売られているのは「成果」か「教材・ツール」か。代金の行き先を一本の線で書いてみる
  • 見せられた実績の数字は、自分の手で確かめられるか。確かめられないなら根拠は弱い
  • 事業者が金融商品取引業の登録を受けているかを、金融庁の一覧で確認する
  • 利害のない家族や友人に、契約の前に一度だけ話してみる
迷ったとき用の一言 本当に毎月安定して増える運用なら、急いで教材を売らなくても、黙って自分で回せばいい。こちらが調べる時間を取ることを嫌がる相手なら、それはそれで一つの答えだと思う。

不安なとき、もう払ってしまったとき

すでに高額な代金を払ってしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。「追加で○○すればもっと稼げる」と上乗せを求められたら、そこで止めてほしい。順序はこうなる。①追加で払わない ②広告・やり取り・契約の記録を残す ③支払った決済元(カード会社など)に相談する ④公的な窓口に相談する。

相談先は、抱え込まずに使ってほしい。消費生活センターにつながる消費者ホットライン「188」(いやや)、金融庁の「詐欺的な投資に関する相談ダイヤル」(0570-050588/平日10〜17時)、そして緊急でない警察相談は「#9110」がある。私には個別の解決はできない。最終的な判断は、この正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。

この記事のまとめ

  • 「月利10〜30%」は割り算でほどける。月利20%なら複利で1年約8.9倍——毎月続く前提に無理がある
  • 売られているのは「成果」ではなく教材・ツール。代金は相場ではなく売り手にまず入る
  • 断定的な勧誘・無登録での勧誘は法令上の問題になりうる。登録は金融庁の一覧で確認できる

結局は、その場で買わない・自分で数字を確かめる・登録と出どころを調べる・第三者に話す。この4つに尽きる。