第323号黒岩検閲済 2026年7月11日 発行(不定期刊/前号:7月10日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|信用状況アンケート×電話勧誘 サポートプラン契約の型

「スマホ投稿だけで月20万円」と謳う副業広告が、クレジットカードの利用状況を尋ねたのち電話勧誘で高額プランへ進む型を、消費者庁の注意喚起で調べた

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黒岩警戒度

「スマホに投稿するだけで、毎日最低1万円」——そんな副業広告を見た、という話を聞いた。案内の先で待っていたのは、収入の説明より先に、クレジットカードの利用状況や借金の有無を尋ねるアンケートだったという。今号はこれを、特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、消費者庁の注意喚起とお金の流れの両面から調べる。で、その"月20万円"の根拠は、広告のどこにも書かれていない。まずそこから見ていく。

断定的な収入表示が、まず入り口になる

広告に並ぶのは「スマホ投稿だけで月20万円」「毎日最低1万円」といった、具体的で断定的な数字である。1件800〜1,200円ほどの成果報酬という内訳が添えられ、「毎日続ければ」という前提でこの金額に到達する計算が示される。ただ、この報酬が実際に支払われた実績は、第三者が検証できる形では示されていない。数字が具体的であるほど、それだけで信じてしまいそうになるが、具体性と裏付けは別の話だ、と私は思う。

型を三段で分解する

第一段階:断定的な広告と、公式LINEでのアンケート

SNS広告から公式LINEアカウントへ登録すると、まずアンケートが送られてくる。年齢や家族構成のような一般的な質問に混じって、クレジットカードの利用状況、あるいは債務整理や自己破産の経験の有無を尋ねる項目が入っていることがある。この段階ではまだ金銭のやり取りは発生しない。役目は、次の窓口へ進む人をふるい分けることに絞られている、と見ている。

第二段階:別のLINEへの再誘導と、30分から1時間の電話

アンケートに答えると、案内は別のLINEアカウントへ移る。そこで日程を決め、30分から1時間ほどの電話での説明が設定される。企業の窓口番号からではなく、担当者個人とのやり取りという体裁を取ることが多い。時間をかけた説明そのものが、警戒心をゆるめる仕掛けになっている。

第三段階:「無料のままでは稼げない」という電話口の畳みかけ

電話がつながると、「無料プランのままでは思うように稼げない」「サポートプランに入れば実績が伸びる」という説明に変わる。示される金額は30万円から90万円ほど。一括か分割かを選ばせる形で、クレジットカードでの分割払いが案内される。アンケートで信用状況を先に尋ねていたのは、この支払いが実行できるかどうかを見ていたからではないか、と私は見ている。

「月20万円」の根拠は? 消費者庁は令和7年6月26日、簡単な副業をうたい高額なサポートプランを契約させる事業者について注意喚起を公表した。「アフィリエイトは、初心者でも簡単に稼ぐことができる」「このプランなら、月50万が当たり前になる」などと勧誘し、高額なサポートプランを契約させたが報酬が得られなかった、という相談が各地の消費生活センターに寄せられているという(消費者庁「簡単な副業をうたい高額なサポートプランを契約させる事業者に関する注意喚起」2025年)。将来の収入について断定的な言い方をすることは、消費者契約法が定める「断定的判断の提供」に触れうる(消費者契約法第4条第1項第2号)。同種の型は令和7年12月19日にも、在宅ワークの求人を入口に高額なコンサルティング契約をさせる事業者として重ねて公表されている(消費者庁「在宅ワークの求人情報をきっかけに、高額なコンサルティング契約をさせる事業者に関する注意喚起」2025年)。一度だけの事例ではない、という点は覚えておきたい。

なぜ、支払い能力を先に確かめるのか

普通に考えれば、副業の説明より先に個人の信用情報を尋ねる必要はない。それでもこの型では、アンケートの早い段階でクレジットカードの利用状況や債務整理の経験を尋ねてくる。高額なプランを提示したときに、実際に支払える相手かどうかを見極めるための質問ではないか——そう見ている。もしそうだとすれば、答える側は自分の家計の内情を、副業の説明よりも先に明け渡していることになる。

迷ったとき用の一言 「その場で決めない」。電話で時間をかけて説明された話ほど、断りにくくなる。だが健全な取引であれば、いったん電話を切って調べる時間を惜しんだりはしないはずだ、と私は思う。

「事業」の実態を、法律の側から確かめる

「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で消費者を誘引し、その仕事に必要だとして商品・サービス等の代金を負担させる取引は、特定商取引法上「業務提供誘引販売取引」として規律されている(消費者庁「特定商取引法ガイド-業務提供誘引販売取引」)。この取引には契約書面受領日から20日間のクーリング・オフが認められる。また、事業者が電話で勧誘し申込みを受ける取引は「電話勧誘販売」として規律され、こちらは8日間のクーリング・オフの対象になる(消費者庁「特定商取引法ガイド-電話勧誘販売」)。LINEでのやり取りと電話勧誘のどちらが主体かによって当てはまる規律は変わりうるが、いずれにせよ書面を受け取っていない、あるいは受け取った書面の内容がやり取りと食い違うと感じたら、まずそこを確認してほしい。

分割払いという設計

「一括か、分割か」という選択は、一見すると相手の都合に合わせた親切な提案に見える。だが分割やリボ払いを選ぶほど、手数料の分だけ総支払額は膨らむ。国民生活センターは、情報商材や副業契約でクレジットカードの分割払い・リボ払いを利用した結果、支払総額が高額になるトラブルが増えていると注意を促してきた(国民生活センター「簡単に高額収入を得られるという副業や投資の儲け話に注意!」2018年)。その場で電卓を叩いて総額を確かめる人は多くない、というのが実務を見てきた私の感覚である。

  • 広告の収益数字(毎日〇円・毎月〇円)に、確認できる裏付けがあるか
  • アンケートで、収入の説明より先に信用情報(クレジットカード利用状況・債務整理歴等)を尋ねられていないか
  • 案内される窓口が、企業の公式アカウントか個人名義のアカウントかを確かめたか
  • 契約前に、概要書面・契約書面を受け取っているか
  • 分割払いを選んだ場合の総支払額を、自分で計算したか
  • その場で契約せず、いったん電話を切って確認する時間を取ったか

この記事のまとめ

  • 「スマホ投稿だけで月20万円」という断定的な数字は、消費者契約法上の「断定的判断の提供」に触れうる。消費者庁は同種の型を令和7年に2度、注意喚起として公表している
  • アンケートで信用情報を先に尋ね、電話で高額プラン契約へ進む型は、業務提供誘引販売取引・電話勧誘販売として書面交付・クーリング・オフの対象になりうる

収入の説明より先に家計を尋ねられたら、それ自体が一つの目安になる。急かされたら、まず電話を切って確かめてほしい。