「月々のおつり投資」の固定費を割り算したら、投資額の2割近くになる型を、金融庁の資料で確かめた
「おつり」や「ポイント」を自動で投資に回してくれるサービスの広告を、読者の方から教えてもらいました。今号はこれを取り上げますが、特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで調べています。断っておくと、この手のサービスは詐欺ではありません。私が今回洗ったのは「儲かるか、儲からないか」ではなく、「毎月かかる固定費が、実際どれくらいの重みなのか」という一点です。で、その費用の出どころは?――割り算してみると、思ったより素直な答えが出ました。
「手軽な少額投資」ほど、手数料の話が後回しになる
この手のサービスは、たいてい似た料金の組み方をしています。月あたり数百円の固定利用料と、預けている残高に対して年率0.数%かかる運用報酬の二階建てです。仮に月額390円の固定費、運用報酬を年率0.33%としておきます。数字だけ見ると、どちらも小さく見えます。ここが罠だと私は見ています。率で示されると小さく見える費用も、投資している金額そのものが小さいと、率ではなく額としてそのまま重くのしかかってくるからです。
数字でほどく――月々2,000円を例に割り算する
実際に割ってみます。月々2,000円をおつりやポイントで積み立てているとして、固定費が月390円だとすると、
390円 ÷ 2,000円 = 19.5%
年に直しても同じ計算です。固定費は年4,680円、投資額は年24,000円。4,680 ÷ 24,000 = 19.5%。つまり、積み立てた金額のおよそ2割が、運用の巧拙とは関係なく固定費として先に消える計算になります。運用報酬の年率0.33%は、初年度は残高が小さいのでそこまで効きませんが、預ける期間が長くなり残高が積み上がるほど、じわじわと効いてくる部分です。
この「手数料の差が長期のリターンを左右する」という話は、私の独自の意見ではありません。金融庁の資料でも、国内の残高上位ファンドの平均信託報酬(保有している間、残高からずっと差し引かれ続ける運用管理費用)が年1.53%であるのに対し、米国では0.28%にとどまるという比較が示されています(金融庁「つみたてNISAについて」2017年)。同じ資料では、つみたてNISA対象となる投資信託の信託報酬に「0.5%以下」という上限の目安が示されてもいます。低コストであることが、公的にも一つの安心材料として扱われている、ということです。
忘れられがちな前提――手数料の説明を受ける権利と、自己責任の原則
金融庁は基礎的な説明資料の中で、「株式、債券、投資信託の売買には通常、手数料などのコストがかかります」と述べたうえで、「株式、債券、投資信託などは預貯金と違い、元本割れのおそれがあります」とも明記しています(金融庁「基礎から学べる金融ガイド」2023年12月改訂版)。同じ資料は、「必ず儲かります」「安全・確実・高利回り・元本保証」といった説明を受けたときには疑いを持つべきだ、という趣旨も示しています。おつり投資やポイント投資に限った話ではなく、投資というものに共通する前提です。
日本証券業協会の自主規制規則にも、「協会員は、有価証券の売買その他の取引等に関し、重要な事項について、顧客に十分な説明を行うとともに、理解を得るよう努めなければならない」という説明義務と、「投資は投資者自身の判断と責任において行うべきものであることを理解させるものとする」という自己責任原則が並んで書かれています(日本証券業協会「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」)。手数料込みの説明を受けたうえで、最後に判断するのは自分だ、という順番は変わりません。
消費者庁も、投資や副業をきっかけにした消費者トラブルが年齢を問わず続いていると注意を促しています(消費者庁「SNSなどを通じた投資や副業といった『もうけ話』にご注意ください!」)。今回のような正規サービスの手数料構造は、この注意喚起がそのまま当てはまる話ではありませんが、「手軽さ」を前面に出す売り文句には、いったん立ち止まって数字を確かめる姿勢が共通して要る、と私は見ています。
- 月額の固定費を、自分が実際に積み立てている金額で割ってみたか
- 運用報酬(信託報酬に相当する部分)の年率を確認したか
- 「元本保証」「必ず儲かる」といった説明が混じっていないか
- 出金・解約にかかる条件や日数を確認したか
- 海外資産を含む場合、為替変動の影響を受けることを理解しているか
この記事のまとめ
- 少額の自動積立サービスは、月額固定費が「率」ではなく「額」として重くのしかかりやすい型がある
- 金融庁の資料でも、手数料の差が長期リターンを左右することが示されている
詐欺ではありません。ただ、「月額○○円だけ」という説明を、自分の投資額で割ってから始めても遅くはない、というだけの話です。