第149号黒岩検閲済 2026年6月17日 発行(不定期刊/前号:6月16日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|評判の読み方

「市場平均に勝てない投資信託は怪しい」は本当か――評判の正体と、本物の詐欺との分かれ目

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黒岩警戒度

「あのファンドは手数料が高い」「市場平均に負けている」「運営者の言うことが宗教っぽくて怪しい」。あるファンドの評判を並べていたら、こういう声が目につきました。気持ちは分かります。ただ、ここには整理しておきたい混同がひとつあります。「市場平均に勝てない」ことと「詐欺である」ことは、まったく別の話だ、ということです。今回は、正規の投資信託が市場平均に届かない仕組みを淡々とほどいたうえで、そこから先にある「本物の詐欺の型」との分かれ目を引いてみます。

“怪しい”の正体――市場平均に負けるのは、必ずしも異常ではない

まず押さえておきたいのは、運用のプロが選んで売買する「アクティブ運用」の投資信託でも、長い目で見て市場平均(インデックス)に勝ち続けるとは限らない、ということです。これは陰謀でも手抜きでもなく、構造の問題です。金融庁も、市場全体を上回る成果を狙う商品は「リスクとコスト(手数料等)が高くなりがち」で、長期にわたって市場平均を上回る投信を事前に見分けるのは投資初心者には難しい、という趣旨を公的な資料で示しています(金融庁「つみたてNISAについて」)。

つまり、「市場平均に負けている期間がある」という事実そのものは、正規のアクティブファンドにごく普通に起こることであって、それだけを根拠に「怪しい」「詐欺だ」とは言えない。ここがスタート地点です。

で、その差はどこから来るのか――お金の流れで見る

では、なぜ市場平均に届きにくいのか。私はいつも「で、その差の出どころは?」と分解するのですが、ここでも答えはお金の流れにあります。大きく二つです。

その1:手数料(信託報酬)が、毎年リターンを削る

投資信託は持っているあいだ、運用や管理の対価として「信託報酬」が毎年差し引かれます。これはリターンがプラスでもマイナスでも関係なく引かれる固定的なコストなので、長く持つほど効いてきます。金融庁の解説でも、投資信託のコストは「リターンに直結してくることから、安いものを選ぶのが原則」とされています(金融庁「教えて虫とり先生」)。市場平均に連動するだけのインデックス投信は、人が銘柄を選び込む手間が小さいぶんコストを低く抑えやすく、その差がそのままリターン差として現れやすい――という単純な引き算です。

その2:暴落に備える「現金」が、上げ相場では足を引っぱる

下落局面で買い向かうために、あえて一定の現金を抱えておく方針のファンドもあります。これは守りとしては理にかなっていますが、相場が一本調子で上がる局面では、その現金部分が値上がりに乗れず、結果として「フルに投資している市場平均」に見劣りします。同じ相場でも、設計思想が違えば成績の出方は変わる。これも、隠された不正ではなく、表に出ている設計の差です。

“怪しい”評判の読み替え方 「市場平均に負けた」「手数料が高い」という評判は、詐欺の証拠ではなく、コストと運用方針という、目論見書に書いてある材料の話であることが多いです。気になったら感情で判断する前に、その商品の信託報酬(年率%)と、現金をどれくらい抱える方針かを、運用会社が公開している資料で確かめる。それだけで「怪しい」の正体はかなり見えてきます。

ここから先は別の話――本物の詐欺が見せる“型”

ここまでは「正規だが、評判がよくない」ファンドの話でした。問題は、こうした“怪しい”という空気に紛れて、まったく性質の違う「本物の詐欺的勧誘」が同じ顔をして近づいてくることです。両者を分ける線は、実ははっきりしています。

線その1:「必ず儲かる」「元本保証」と言い切るか

正規の金融商品は、将来の利益を断定できません。むしろ法律が断定を禁じています。金融商品取引法は、勧誘の際に「不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げ」る行為を禁止行為として定めています(e-Gov法令検索・金融商品取引法第38条)。金融庁も、詐欺的商法の典型として「上場確実ですので、必ず儲かります!元本も保証します!」といった勧誘を挙げて注意を促しています(金融庁「詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!」)。「市場平均に負けることもあります」と正直に書く側ではなく、「絶対に勝てます」と言い切る側を疑う。これが一本目の線です。

線その2:日本で登録を受けた業者か

もう一本は「相手が誰か」です。日本の居住者を相手に投資の勧誘・運用を業として行うには、金融商品取引業の登録が必要で、海外所在をうたっていても同じです。金融庁は、無登録業者には「実際は(ほとんど)事業を実施していないのに、元本や利益を保証する等と勧誘する詐欺的な業者が多くある」と注意喚起しています(金融庁「いわゆるファンド形態での販売・勧誘等業務について」)。登録の有無は金融庁のサイトで確認できます。手数料の高い安いを議論する前に、まず「登録された相手か」を見る。順番が逆だと、土俵にすら上がっていない相手と取引してしまいます。

いま被害は“正規の顔”でやって来る SNSやマッチングアプリで接触し、信用させてから投資名目で振り込ませる――警察庁によれば、令和6年(2024年)のSNS型投資・ロマンス詐欺は認知件数1万237件、被害額は約1,272億円にのぼります(警察庁「令和7年版警察白書」)。1件あたりの平均は1,000万円を超える。彼らはいかにも本物らしい画面や実績を見せてきます。だからこそ、見た目の“それっぽさ”ではなく、上の2本の線――断定するか/登録があるか――で機械的に切り分けるのが安全です。

“怪しい”を感じたときの、ゆるい確認手順

正規ファンドへの不満と、詐欺の警告を、ごちゃ混ぜにしないための順番です。気合いではなく手順にしておくと疲れません。

  • 「市場平均に負けた/手数料が高い」が論点なら、まず信託報酬(年率%)と運用方針を目論見書で確認する
  • 「必ず・絶対・元本保証」の言葉が出たら、内容の良し悪し以前に、その時点で一度離れる
  • 相手が日本で金融商品取引業の登録を受けているかを、金融庁のサイトで確かめる
  • SNSやマッチングアプリ経由で投資へ誘われたら、見せられた実績画像は根拠にしない
  • 判断を急かされたら、それ自体を黄信号として、第三者に一度話す
迷ったとき・不安なときの相談先 投資勧誘を受けて不審に思ったら、金融庁の「詐欺的な投資に関する相談ダイヤル」(0570-050588/平日10〜17時)へ。実際に被害が出ていなくても、悩んでいる段階の相談も受け付けています(金融庁の案内)。商品やもうけ話全般の不安は、消費者ホットライン「188(いやや!)」で最寄りの消費生活センターにつながります(消費者庁の注意喚起)。

この記事のまとめ

  • 「市場平均に勝てない・手数料が高い」は、コストと運用方針という設計の話。それ自体は詐欺の証拠ではない
  • 本物の詐欺との分かれ目は「必ず儲かる・元本保証と断定するか」「日本で登録を受けた業者か」の2本の線

正規ファンドへの不満と、詐欺の警告は、別の引き出しにしまう。評判で慌てる前に、コストは目論見書で、相手は登録の有無で、それぞれ確かめれば足ります。