「無料セミナー」を入口に、数十万円の投資講座へ段階的に誘導する勧誘の型を、お金の流れで調べた
「投資は、いま始めないと損をする」「新NISAには落とし穴がある」。そう不安をあおる広告から、無料、あるいは数千円のセミナーへ誘う流れがある。そこまでは、たしかに安い。問題はその先だ。話を聞きに行くと、本命として数十万円の講座やオンラインサロンを勧められる。今号はそういう「型」を、特定の名称は挙げずに、お金の流れでほどいてみたい。
まず、この「型」の順番を並べてみる
手口は案件ごとに違って見えても、順番はだいたい同じだ。①不安をあおる広告で足を止めさせる ②無料〜数千円のセミナーで「入口」をつくる ③その場で「今日だけ」「今なら安い」と、数十万円の本命講座へ進ませる。入口が安いのは、迷わせず一歩を踏ませるためだと私は見ている。
国民生活センターの資料には、まさにこの段取りが残っている。ある相談では、数千円のセミナーで話を聞くと高額なセミナーを勧められ、「今以外だと30万円あがる」と急かされて、クレジットカードで約80万円を決済して契約したという(国民生活センター・2021年)。同じ資料には約30万円・約25万円のオンラインサロン契約の例もあり、被害は20〜50歳代まで広い。特別に不注意な人だけが引っかかる、という話ではないのだと思う。
数字でほどく——「安い入口」と「高い出口」
金額を並べると、落差がはっきりする。入口は無料〜数千円。出口は約25万〜80万円、さらに上のコースまで用意されていることもある。仮に「80万円は毎月の利益で取り返せる」と言われても、一度立ち止まりたい。では、その利益は、いったいどこから出るのか。
件数の面でも、これは目立つ手口になっている。情報商材に関する相談は、872件(2013年度)から6,593件(2017年度)へと7倍を超えて増えた(国民生活センター・2018年)。「増えている型」だという点は、印象ではなく数字が示している。
「必ず儲かる」「絶対に損しない」は、法律が禁じる勧誘だ
この型の広告や講座は、しばしば「必ず」「確実に」と言い切る。だが、断定は法律が禁じている。証券取引等監視委員会は、価格が必ず上がる・下がるといった断定的な判断を示して勧誘することは金融商品取引法38条で禁止だと説明する。「この銘柄は絶対に値上がりします」といった勧誘は、法令違反になりうる、ということだ。
「新NISAは危険」と不安をあおる入口も、構図は同じだと思う。感情を先に揺さぶって、判断を早めさせる。冷静に割り算をさせないための演出だと見ている。ただ、うまい話なら、急がなくても明日も残っているはずだ。
そもそも「個別に教える」には、国の登録が要る
出どころを確かめる前に、もう一つ見ておきたい点がある。個別の銘柄や売買を助言することを商売にするには、国の登録が必要だ。金融庁は、日本の居住者を相手に金融商品取引業を行う者は登録を受ける必要があり、無登録で行うことは違法だと明記している。
無登録の相手に頼む危うさも、はっきり書かれている。無登録業者は、投資者の保護のための態勢が当局では確認できず、整っていない可能性が高いという。相手が登録を受けているかは、こちらで確かめられる。金融庁は無登録業者の名称を公表し(ただし「載っていない業者でも無登録営業をしていることがある」と注意している)、事業者名や電話番号から登録の有無を検索できる機能も案内している。で、その「先生」は、登録を受けているのか。
立ち止まるための、確認の手すり
- 入口が「無料・数千円」でも、本命が数十万円なら“入口”だと意識しておく
- 「必ず」「絶対」「今日だけ」が出たら、断定と緊急=黄信号として一拍おく
- 「個別に教える」講座なら、主催者が登録業者かを金融庁の検索で確かめる
- 契約の前に、家族や消費生活センターなど利害のない相手に一度話す
もう申し込んでしまった場合の順番
すでに高額な契約をしてしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。 追加の支払いを求められても、そこで止めてほしい。そのうえで、順番はこうなる。①これ以上は払わない ②契約書・広告・やり取りの記録を残す ③支払った決済元(カード会社など)に連絡する ④消費生活センターや警察に相談する。
契約の形によっては、クーリング・オフができる場合もある。国民生活センターは、連鎖販売取引に該当する場合、書面などを受け取った日から20日以内はクーリング・オフができると説明する。ただし通信販売や一般的な情報商材の購入には及ばないこともあるので、まずは消費者ホットライン188で自分のケースを確かめてほしい。私に個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねるのが、一番確かだ。
この記事のまとめ
- 「無料・数千円のセミナー」は入口で、本命は数十万円の高額講座——という段取りが、この型の骨格
- 「必ず儲かる」の断定は法律が禁じ、個別に助言するには国の登録が要る
確かめる順番は、いつも同じだ。入口の安さに乗る前に、「で、その利益の出どころは?」と一度問い直す。それだけで、多くは立ち止まれると思う。