「派手に増やさない、長期でコツコツ」と手堅さを売りに無料で配る自動売買EAの型を、お金の流れで調べた
「短期で大きくは狙いません」「相場を当てにいくのではなく、長期でコツコツ積み上げる設計です」――そう書き添えて、FXの自動売買ツール(EA)を無料で配る投資ブログやSNS発信があります。派手な利益自慢がない。むしろ控えめで、慎重そうに見える。だからこそ、つい信じてしまう。特定のツールや発信者を名指しはしませんが、この「手堅さを売りにして無料で配るEA」という型を、性能の話ではなくお金の流れの側から調べました。最初に置いておきたい問いはひとつです。で、その利益の出どころは、どこなのでしょうか。
なぜ「派手に儲かる」と言わないのか
「月利30%」「半年で資産10倍」――そういう数字は、いまや多くの人が身構えます。うますぎる話は警戒される、というのが知れ渡ったからです。そこで出てくるのが、逆に温度を下げた言い回しです。「大きくは狙わない」「無理をしない設計」「相場を当てにいかない」。手堅さを前面に出すことで、読み手の警戒心をやわらげる。私はこの控えめさそのものを、入口の演出として見ています。
気をつけたいのは、慎重そうな見た目と、お金の流れの中身は別だということです。利益率が穏やかかどうかと、その仕組みが健全かどうかは、まったく別の話です。派手な看板を下ろしても、出どころの問いが消えるわけではありません。
「無料で配る」理由を、お金の流れで見る
ツールを無料で渡せば、配る側の手元には一円も入りません。慈善活動なら話は別ですが、勧誘として続いている以上、どこかでお金が生まれているはずです。お金の流れで見ると、たどり着く先はだいたい決まっています。指定された業者で口座をつくらせ、そこへ入金させること。あなたが取引するたびに発生する手数料やスプレッドの一部が、紹介者へ報酬として戻る仕組み。あるいは、無料のあとに控えている有料の上位プランや別商材です。
つまり「無料」はゴールではなく入口で、本当の出口はあなたが入金する口座の側にあります。そして「自動で増える」という言い回しは、それ自体が公的に注意されている入口でもあります。金融庁は、SNSなどでの投資勧誘について「自動売買ソフトを使えば、なにもしなくても儲かる」などと言って一方的に勧めてくる手口に注意するよう呼びかけています(金融庁「『FX取引・暗号資産投資の勧誘』にご注意!!」)。「コツコツ」と穏やかに語られても、放置で増え続ける前提が置かれているなら、その前提自体を一度疑っておきたいところです。
「相場を当てにいかない」でも、出どころの問いは消えない
「予想を当てにいかない」「決まったルールで淡々と」という説明は、いかにも理屈が通って聞こえます。ですが、為替であれ何であれ、相場が動くかぎり、必ず勝てる仕掛けというものは原理的に成り立ちにくい。「手堅いから減らない」と受け取ってしまうと、そこがいちばん危ういところです。
仮に勧誘の中で「必ず利益が出る」「絶対に値上がりする」といった断定があれば、それは表現として一線を越えています。証券取引等監視委員会は、有価証券の価格等が必ず騰貴する、又は必ず下落するといった断定的な判断を示して勧誘することを禁止していると説明しています(証券取引等監視委員会「投資をされる方へ」。根拠は金融商品取引法)。穏やかな口調でも、中身が「必ず」「絶対」に行き着いていないか。言葉の温度ではなく、約束の中身を読みたいところです。
誰が運用し、どこに入金するのか
手堅さの話に気を取られると、肝心の「誰が・どこで」が後回しになりがちです。EAの先で開設をすすめられる口座が、日本で登録のない業者だった場合、リスクは一段上がります。金融庁は、無登録業者との取引について出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたり、急に連絡が取れなくなるといったトラブルに注意しています(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)。穏やかに増えて見えても、引き出そうとした瞬間に止まる――出口で初めて分かる、という形です。
登録の有無は、自分で確かめられます。金融庁は無登録で金融商品取引業を行う者の名称等を公表していますが、同じ案内の中で掲載されていない者でも無登録営業に該当する場合があり得ると明記しています。一覧に載っていない=安全、ではない、ということです。だからこそ、見るべきは「登録されているか」のほうになります。
こうした相談は、いま増え続けています。SNSをきっかけにした金融商品・サービスの消費者トラブルは、2021年度の52件から2023年度には1,629件へ急増し、いったん振り込むと被害回復が困難だとされています(国民生活センター・2024年)。2年で約31倍です。入口の物腰のやわらかさと、出口の取り戻しにくさの落差を、数字も示しています。で、その配当は、誰の金から出ているのでしょうか。
入れる前に確かめておきたいこと
難しい判定はいりません。EAの性能や勝率、ましてや「手堅そうかどうか」の印象には立ち入らず、お金の流れだけを順番に確かめれば、たいていの違和感はその場で見つかります。入金や口座開設の前に、次の点を一度立ち止まって確かめてみてください。
- 「無料で配る理由」が、お金の流れとして筋の通る説明になっているか
- すすめられた業者が、金融庁の登録業者一覧に載っているか(載っていない=安全ではない)
- 入金先が法人名義か(個人名義を指定されたら、その時点で引き返す)
- 「手堅い」「無理しない」の奥に、「必ず」「絶対」という断定が隠れていないか
この記事のまとめ
- 「手堅さ・控えめさ」は警戒を解くための演出にも使われる。利益率が穏やかかどうかと、仕組みが健全かどうかは別の話
- 確かめるのはツールの印象ではなく、業者の登録の有無・入金先の名義・「必ず/絶対」という断定の有無
派手に儲かると言わないからといって、出どころの問いは消えません。無料で配る理由がお金の流れで説明できないなら、入れる前に手を止める。出金できるかは、入金してからでは確かめられません。