「完全無料」で配る自動売買EAが、出金できない口座につながる型を、お金の流れで調べた
「初心者でも安心」「24時間365日、入れて放置するだけで自動で取引してくれる」――そう書き添えて、FXの自動売買ツール(EA)を完全無料で配る投資ブログやSNS発信があります。投資の体験談を語る個人の発信だったりもして、入口はやわらかい。特定のツールや発信者を名指しはしませんが、この「完全無料で配るEA」という型を、性能の話ではなくお金の流れの側から調べました。最初に置いておきたい問いはひとつです。で、その利益の出どころは、どこなのでしょうか。
なぜ「完全無料」で配るのか
ツールを無料で渡せば、配る側の手元には一円も入りません。慈善活動なら話は別ですが、勧誘として続いている以上、どこかでお金が生まれているはずです。お金の流れで見ると、たどり着く先はだいたい決まっています。指定された業者で口座をつくらせ、そこへ入金させること。あなたが取引するたびに発生する手数料やスプレッドの一部が、紹介者へ報酬として戻る仕組み。あるいは、無料のあとに控えている有料の上位プランや別商材です。
つまり「無料」はゴールではなく入口で、本当の出口はあなたが入金する口座の側にあります。ツールの性能をどれだけ吟味しても、この出口を見ないかぎり、お金がどこへ向かうのかは見えてきません。
「自動で儲かる」という言葉が立つ場所
「放置で稼げる」「なにもしなくても儲かる」という売り文句は、それ自体が公的に注意されている言い回しです。金融庁は、SNSなどでの投資勧誘について「自動売買ソフトを使えば、なにもしなくても儲かる」といった誘い文句に注意するよう名指しで呼びかけています(金融庁「『FX取引・暗号資産投資の勧誘』にご注意!!」)。相場が常に動く以上、放置で必ず増え続ける仕組みは原理的に成り立ちにくい、という前提に立っているわけです。
実際の相談も寄せられています。国民生活センターには、無料のアプリをダウンロードするよう勧誘され、「必ず儲かる」と説明されて高額なツール購入や借入に至ったという事例が報告されています(国民生活センター・2023年)。入口の「無料」と、出口で求められる金額が、まるでつり合っていない。これがこの型の特徴です。
お金が向かう先の口座を、先に確かめる
無料EAの先で開設をすすめられる口座が、日本で登録のない海外業者や無登録業者だった場合、リスクは一段上がります。金融庁は、無登録業者との取引について「出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたり、急に連絡が取れなくなる」と注意しています(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)。入れている間は数字が増えて見えても、引き出そうとした瞬間に止まる――これが「出金できない口座」の典型です。
業者が登録されているかどうかは、自分で確かめられます。金融庁は無登録で金融商品取引業を行う者の名称等を公表しており、登録業者の一覧と合わせて照らせます。さらに、入金先として個人名義の口座を指定された場合、それは詐欺だと考えてよいと消費者庁は明言しています(消費者庁「もうけ話にご注意ください!」)。法人の取引なのに振込先が個人名、というのは、それだけで強い赤信号です。
こうした相談は、いま増え続けています。SNSをきっかけにした金融商品・サービスの消費者トラブルは、2021年度の52件から2023年度には1,629件へ急増し、いったん振り込むと被害回復が困難だとされています(国民生活センター・2024年)。3年で30倍を超える伸びです。無料という入口のやわらかさと、出口の取り戻しにくさの落差を、数字も示しています。
入れる前に確かめておきたいこと
難しい判定はいりません。EAの性能や勝率の話には立ち入らず、お金の流れだけを順番に確かめれば、たいていの違和感はその場で見つかります。入金や口座開設の前に、次の点を一度立ち止まって確かめてみてください。
- 「無料で配る理由」が、お金の流れとして筋の通る説明になっているか
- すすめられた業者が、金融庁の登録業者一覧に載っているか(無登録の警告対象でないか)
- 入金先が法人名義か(個人名義を指定されたら、その時点で引き返す)
- 「自動で必ず儲かる」「元本保証」といった断定が、どこかに混じっていないか
この記事のまとめ
- 「完全無料のEA」は入口で、出口はあなたが入金する口座の側にある
- 確かめるのはツールの性能ではなく、業者の登録の有無・入金先の名義・「自動で儲かる」という断定の有無
無料で配る理由がお金の流れで説明できないなら、入れる前に手を止める。出金できるかは、入金してからでは確かめられません。