「国が保証する高利回り債券」をうたう偽の国債・社債勧誘の型を、お金の流れで調べた
「金利が戻ってきた」というニュースを、このところよく目にします。個人向け国債の利率が上がってきたのは事実で、それ自体はまっとうな話です。気になっているのは、その追い風に乗るように届く「国が保証する高利回りの債券があります」という勧誘のほうです。特定の業者や案件を名指しすることはせず、案件をまたいで共通する“金利上昇のニュース → 高利回り債券の勧誘 → 振込”という型を、まず正規の国債がどう買えるのかという地点から、お金の流れの側で調べてみました。
「本物の個人向け国債」は、どこで、いくらで買えるのか
勧誘の型を見るには、まず本物の姿を確かめておくのが早道だと思っています。個人向け国債は国が発行する商品ですが、買える場所は決まっています。財務省は購入方法について、「証券会社、銀行、郵便局などの金融機関で購入できます」と説明しています(財務省)。つまり、窓口や正規のネット口座を通すのが筋で、SNSのDMや突然の電話で個人に直接売りつけられる、という性質のものではありません。
利率も「言い値」ではなく、回号ごとに財務省が公表しています。たとえば固定5年の第181回債の適用利率は1.79%として募集されました(財務省)。変動10年型は「基準利率×0.66(ただし、最低0.05%)」という算式で毎回決まり(財務省)、その時々の相場で上下します。金利が上がってきたとはいえ、年に数%という水準が前提だ、ということです。ここを押さえておくと、勧誘の数字を冷静に見られます。
「国が保証」「元本保証で高利回り」をうたう型
正規の姿と並べると、勧誘の型の特徴が見えてきます。よく使われるのが「国が保証」「元本保証で、銀行よりずっと高い利回り」という言い回しです。国債という言葉に「国」の安心感を重ね、そこに正規の国債ではあり得ない高い利率を貼り付ける——お金の流れで見ると、この“安心の借り物”がいちばん効いている部分だと思います。語られるのは国債だったり、聞いたことのない会社の社債だったり、未公開株だったりと一定しません。
では、そうした債券や株式を、見知らぬ相手から買って大丈夫なのか。金融庁は未公開株について、「未公開株の販売等を行うことが出来るのは、当該未公開株の発行会社や登録を受けた証券会社に限られます」と注意を呼びかけています(金融庁)。さらに、「日本で登録を受けずに金融商品取引業や暗号資産交換業を行うことは違法です」とも明記しています(金融庁・2024年更新)。「国が保証」と言いながら、その相手が日本の登録を受けていないなら、説明はそこで食い違っています。
なぜ「金利が戻ってきた」局面で増えるのか
金利のニュースが続く時期は、勧誘にとって追い風になりやすいのだと思います。「銀行に置いても増えない」という不満が世の中に広がり、そこへ「国の保証で高利回り」と差し出されると、つい話を聞いてしまう。心理の入口が開きやすくなるわけです。SNSをきっかけにした投資トラブルの相談は近年急増していて、国民生活センターの集計では、著名人や知人を名乗る勧誘に関する相談が2022年度の170件から2023年度には1,629件へと大きく増えました(国民生活センター・2024年)。同センターは、こうした取引では「いったん振込してしまうと、被害回復が困難です」とも注意しています。
ここがお金の流れのうえで最も重い場所です。正規の国債なら、お金は金融機関を通って国へ向かい、利払いも償還も決まった仕組みで戻ってきます。一方、勧誘に応じて指定された口座へ振り込んだお金は、振込のあとで取り戻すのが難しい。入口で語られる「保証」と、出口の「戻ってくるか」は別の話だ、ということです。で、その高い利回りの原資は、いったいどこから生まれてくるのか。そこを一度立ち止まって考えたいところです。
巻き込まれないための、初動のチェック
難しい知識で見抜こうとすると疲れてしまうので、私は「お金を入れる前にだけ確認する」と決めてしまうのがいいと思っています。正規の国債の買い方を一つ知っているだけでも、ずいぶん見分けやすくなります。
- 個人向け国債を「金融機関の窓口・正規口座以外」で勧められたら、その時点で立ち止まる
- 「国が保証」「元本保証で高利回り」という言い回しは、それ自体を黄信号として扱う
- 勧める相手が日本の登録を受けた事業者かを確認し、未登録なら進めない
- 会社名・社債の発行体について、法人番号公表サイトで実在と所在を確かめる
- 「今だけ」「枠が残りわずか」と振込を急かされたら、その場では決めず一度持ち帰る
この記事のまとめ
- 正規の個人向け国債は金融機関の窓口で買え、利率も回号ごとに財務省が公表する。突然の電話やSNSで個人に直販されるものではない
- 「国が保証」という言葉は、保証されるのは商品であって“売っていると名乗る相手”ではない、というすり替えになりがち
- 金利上昇のニュースは追い風になりやすく、振り込んだお金は取り戻しが難しい。入口の「保証」と出口の「戻るか」は別物
確かめることは、結局この二つに尽きます。それは金融機関の正規ルートか、そして勧める相手は日本の登録を受けているか。答えられないうちは、高い利回りの先へ進まない。