「無料の教科書と動画」で実績を誇り、高額コンサルへ誘う物販スクールの型を、お金の流れで調べた
「200ページの教科書を無料で配ります」「動画講座83本もタダで見られます」。物販やせどりの広告で、そんな“気前のよさ”を入口にする勧誘がある。受け取ってしばらくすると、今度はメールで「もっと本気でやるなら」と、40万〜150万円のコンサルティング契約が案内されてくる。特定の業者は名指ししない。案件をまたいで現れるこの「無料の教材で信用を作り、後から高額契約へ運ぶ」型を、実績数字の裏取りとお金の流れから調べた。
無料の教材は、なぜそんなに気前がいいのか
まず押さえたいのは、無料教材そのものが目的ではない、ということだ。分厚い教科書も大量の動画も、本命である高額契約へ進ませるための入口にあたる。国民生活センターは情報商材のトラブルについて、「情報商材をきっかけに高額なコンサルティングやビジネスセミナー、ソフトウエア等を契約させられるケースもあり」と整理している(2018年)。入口が無料や少額で、本番はその先にある、という構造だ。
もう一つ、無料には心理的な働きもある。タダで分厚い教材をもらうと、こちらは「これだけしてもらった」という負い目を少し持つ。次に有料の話が来たとき、その負い目が「断りにくさ」に変わる。気前のよさは、親切であると同時に、断りづらさを仕込む手段にもなりうる。で、その教材は、誰のために無料なのか。
「年商○億・受講生○千名」という実績を、数字でほどく
この型の広告には、たいてい派手な実績がついてくる。「年商1億円を6年連続」「月商100万円クラスが2300名」。数字は具体的で、いかにも確からしく見える。だが、私たちはその一つひとつを確かめられない。
仮に「2300名が毎月100万円を売っている」が本当なら、その集団は合わせて毎月23億円を動かしている計算になる。100万×2300名=23億円。すごい母集団だ。だが、その名簿も売上も、受け取った側からは裏が取れない。自分で確かめられない実績は、根拠としてはかなり弱い。明細やスクリーンショットも、画像である以上いくらでも作れる。
法律の側から見ても、ここは緩くない。商品やサービスを実際より優れて見せる表示は、景品表示法で優良誤認表示として規制される(消費者庁)。しかも効果や実績をうたう場合、出す側が根拠を示す責任を負う。消費者庁の不実証広告規制では、求められた資料を出さない、あるいは「合理的な根拠を示すものと認められない場合には、当該表示は…不当表示とみなされ」るとされている。つまり「2300名」を出す側に、その根拠をきちんと示す義務がある。受け手が萎縮して信じる話ではない。
40万〜150万円は、何への対価か
無料の次に来るのが、本命の高額コンサルだ。国民生活センターの事例では、1万円で情報商材を買った人が、その後90万円、さらに約85万円の契約を迫られたという流れが紹介されている(2018年)。入口は1万円でも、出口は百万円を超える。情報商材をめぐる相談は、2017年度に6,593件と2013年度比で7倍超に増えた、とも報告されている。
ここで一度、立ち止まって問いたい。40万円なり150万円なりは、いったい何への対価なのか。物販で稼ぐノウハウ自体は、本来そこまで秘匿性の高いものではない。それでも高額になるのは、「あなただけに教える」「サポートが付く」という付加価値の演出があるからだ。で、その利益の出どころは、転売で得る利益なのか、それとも次に入ってくる受講料なのか。そこが説明されない話には、いったん近づかないでおきたい。
契約してしまった後でも、解約の窓は閉じていない
すでに高額コンサルを契約してしまった人もいるだろう。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。「今なら一部免除する」と新しい契約を重ねさせる手口もある。追加を求められたら、そこで止めてほしい。
そのうえで、解約の窓は完全には閉じていない。「稼げる仕事を教える」名目で教材やツールを買わせる取引は、特定商取引法の業務提供誘引販売取引にあたりうる(消費者庁)。この類型では、「法律で決められた書面を受け取った日から数えて20日以内であれば…クーリング・オフをすることができます」とされている。訪問販売の8日間より長い。しかも交付された書面に虚偽や不備があれば、その期間はまだ始まっていない、という扱いになりうる。契約書の名称が「コンサルティング」「業務委託」でも、中身で判断される。一人で抱え込まず、最寄りの消費生活センター(消費者ホットライン188)で当てはまるか相談してほしい。
契約の前に、自分でできる確かめ方
大げさな道具はいらない。入金や契約に進む前に、次のことだけ確かめておきたい。背景には、SNSやDMを入口にした投資・もうけ話の被害が、警察庁の確定値で令和6年のSNS型投資・ロマンス詐欺は認知件数10,237件・被害額1,271.9億円と急増している現実がある(2025年)。入口の軽さに比べて、出口は重い。
- 運営会社と代表者が実在するか、国税庁の法人番号公表サイトで名称・所在地を無料で確かめる
- 掲げられた実績は、自分の手で裏が取れるかを基準にする。取れないなら根拠としては弱い
- 無料教材を受け取った負い目で判断しない。タダの入口と、高額の出口は切り離して考える
- 支払う前に、利害のない家族や友人に一度話す。そのうえで「いったん持ち帰って調べます」と言う
この記事のまとめ
- 無料の教科書や大量の動画は目的ではなく、高額コンサルへ運ぶための入口になりやすい
- 「年商○億・受講生○千名」は自分で確かめられないなら根拠として弱い。実績の表示には出す側が根拠を示す義務がある
- 契約後でも、業務提供誘引販売取引なら20日間のクーリング・オフが使えることがある。窓口は188
無料の気前のよさと、高額の請求。そのちぐはぐさに気づいたら、その場で決めず、運営の実在と実績の裏を自分で確かめてほしい。