第169号黒岩検閲済 2026年6月18日 発行(不定期刊/前号:6月18日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|出金できない型

「出金したいなら、まず税金を先に」と求める投資の型を、お金の流れでほどく

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黒岩警戒度

SNSやマッチングアプリで知り合った相手に投資を勧められ、案内された専用アプリの数字は順調に増えている。なのに、いざ出金しようとすると「先に税金を払ってください」「手数料を入れてもらえれば解除されます」と言われ、引き出せない。今号はこの“出金できない型”を、特定の案件ではなく案件をまたいで繰り返し現れる一つの型としてほどく。お金の流れだけを淡々と追えば、画面の数字とは別の景色が見えてくる。

この型は、いまいちばん金額の大きい入口になっている

まず規模の話から。警察庁の集計では、SNSをきっかけにした投資詐欺・ロマンス詐欺の被害が大きく伸びている。「SNS型投資詐欺の認知件数 9,538件、被害額 1,274.7億円(+46.3%)」「SNS型ロマンス詐欺の認知件数 5,604件、被害額 552.2億円(+37.8%)」(警察庁・令和7年暫定値)。合わせて千八百億円を超える。珍しい不運ではなく、いま最も金額の集まっている入口の一つだ、ということだけ先に頭へ入れておいてほしい。

恋愛感情をはさむか、投資の儲け話で押すか――入りは違っても、後半の運びはよく似てくる。だからここでは「誰に言われたか」ではなく、「お金がどこから来て、どこへ向かうか」で見ていく。

型の運び:信頼をつくる → 数字を見せる → 出金で止める

順番はおおむね決まっている。マニュアルがあるのだろう、と私は見ている。

段階1:時間をかけて信頼をつくる

いきなり投資の話はしない。毎日のやり取りで距離を縮め、警戒がゆるんだころに「いい運用を知っている」と切り出してくる。親身に見える態度そのものが手段になっている、というのが少し怖いところだ。やり取りが二人だけの閉じた場所に移った時点を、私は一つの目印にしている。第三者の目が届かなくなるからだ。

段階2:アプリの中で「利益」を演出する

案内されるのは、たいてい見慣れない投資アプリやサイトだ。最初に少額を入れると、画面の残高はきれいに増えていく。小さな出金に一度だけ応じてみせることもある。「ちゃんと引き出せた」という体験が、次の大きな入金へのためらいを消す。だが、その残高は外から裏が取れない。自分で検証できない数字は、根拠としてはかなり弱い、と考えていい。

段階3:出金しようとすると「先に払え」が来る

大きく増えたところで出金を申し込む。すると流れが変わる。金融庁はこの局面をはっきり書いている。「突然、連絡が取れなくなったり、口座凍結を解除するためと称して、手数料、保証金や税金の支払いといった名目で、さらに高額な入金……を要求されるケースが多くみられます」(金融庁)。つまり「出金のための入金」を求められたら、それは出口ではなく、新しい入口だと見たほうがいい。

「出金には先に入金を」は、向きが逆である 本来、自分の利益を引き出すのに、こちらが追加で払う理由はない。税金は引き出したあとに自分で納めるもので、運用元へ「先払い」する性質の金ではない。出金の条件として新たな振り込みを求められた時点で、いったん全部止めてほしい。

で、その「利益」は誰の金から出ているのか

ここが核心になる。画面の残高が増えていても、それは「運用で増えた」とは限らない。新しく入った人の金を、先に入った人の“配当”に見せかけて回しているだけ、という構造に陥っている例がある。だとすれば、増えて見えるのは数字であって、引き出せる現金ではない。

勧誘の文句も一度疑ってみたい。金融庁は詐欺的な勧誘の典型例として、「上場確実ですので、必ず儲かります! 元本も保証します!」(金融庁)という言い回しを挙げている。「絶対」「元本保証」は、安心の材料ではなく、一歩引いていい合図のほうだ。本当に確実で減らない運用があるなら、人を募らずとも黙って自分で回しているはずだ。で、その利益の出どころは?――そこが説明されない話には、近づかないでおきたい。

確かめられることは、案外ある

相手の気持ちや画面の数字は裏が取れない。けれど、「誰が運用しているのか」は自分の手で照らせる。日本の居住者を相手に投資の勧誘を業として行うには登録が要る。金融庁は無登録業者についてこう注意している。「登録を受けていない『無登録業者』は、投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず」、出金の拒否や法外な出金手数料、急に連絡が取れなくなるといったトラブルが起きる(金融庁)。登録の有無は金融庁が公表する無登録業者の一覧などで照らせる。相手の会社名・サービス名を一つ控えて検索する、それだけで分かることがある。

迷ったとき用の一言 「本当に増えているなら、出金にこちらの追加入金は要らない」。引き出すために先払いを求められた――この一点だけで、もう十分に立ち止まる理由になる。急かされたら、なおさらだ。

立ち止まるための、ゆるい行動ルール

気合いで見抜こうとすると疲れる。いつものクセにしてしまうのがいい。

  • 「出金のために先に払う」を求められたら、その時点でいったん全部止める
  • アプリ画面の残高は「自分で現金として引き出せて初めて利益」と考える
  • 運用元の会社名・サービス名を控え、金融庁の登録の有無を自分で照らす
  • 「絶対」「元本保証」「あなただけ」は、安心材料ではなく黄信号として扱う
  • 利害のない家族や友人に、一度だけでも口に出して話してみる

すでに払ってしまった方へ

気持ちは分かる。だが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。出金のためと言われても、追加の振り込みはそこで止めてほしい。順序はこうなる。

  • ①「税金」「手数料」名目を含め、追加の入金をしない
  • ②やり取り・振込明細・アプリ画面の記録を残す(消される前に)
  • ③振り込んだ決済元(銀行・送金事業者など)に連絡する
  • ④警察・消費生活センターなど正規の窓口に相談する

私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。不安なときは、消費者ホットライン「188」(消費者庁)で身近な消費生活センターにつながる。緊急でない相談は警察相談専用電話「#9110」(警察庁)もある。一人で抱えないことが、結局いちばん確かだ。

この記事のまとめ

  • 「出金したいなら先に税金・手数料を」は出口ではなく新しい入口。向きが逆だと気づきたい
  • 画面の残高は「自分で現金として引き出せて初めて利益」。運用元の登録は自分の手で照らせる

すでに払ってしまった方は、取り戻すより「これ以上払わない」が先。①追加で払わない ②記録を残す ③決済元に連絡 ④正規窓口(188・#9110)へ、の順で。