第161号黒岩検閲済 2026年6月17日 発行(不定期刊/前号:6月17日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
詐欺アラート研究所詐欺アラート研究所の角印

FRAUD ALERT LAB ── 投資詐欺・悪質商法 調査報

一面縮刷版・記事一覧 > 越境ファンドの型
調査報告|越境ファンドの型

「海外で運用するファンド」が毎月配当を約束する型――国境とファンドの看板でぼかした“利益の出どころ”をほどく

公開 最終更新 読了 約6分
黒岩警戒度

「海外で運用しているファンドだから利回りが高い」「日本にいながら、毎月の配当を受け取れる」。こういう誘い文句を、何度か別の名前で見かけた。今号で扱うのは、特定のどこかの会社や商品ではない。「海外で運用するファンドを名乗り、元本保証と毎月配当を約束する」という入口を、一つの型としてほどく。国境とファンドという二つの看板で、肝心の「利益の出どころ」がどうぼかされるのか。そこをお金の流れと、日本の登録制度の側から、淡々と見ていきたい。

「海外」と「ファンド」という二枚の看板

この型の入口には、ほぼ必ず二つの言葉が並ぶ。一つは「海外」。もう一つは「ファンド」だ。どちらも、それ自体は怪しい言葉ではない。だからこそ、確かめる手を止めさせる力を持っている。

「海外で運用している」と言われると、こちらからは中身を見に行けない。運用先が遠いほど、検証は難しくなる。「だから高い利回りが出せる」という説明は、裏を返せば「だから確かめられない」と言っているのに近い。

「ファンド」も同じだ。多くの人からお金を集めて、まとめて運用し、出た利益を分け合う――言葉の響きは、まっとうな投資信託とよく似ている。だが、響きが似ていることと、中身が同じであることは違う。で、その配当は、どこから出ているのか。そこが数字で説明されない限り、看板の立派さは判断材料にならない。

日本で「ファンドを募る」には登録がいる

ここで、制度の側から線を引いておきたい。日本国内で多くの人にファンドへの出資を募ったり、集めた資金を運用したりするには、原則として金融商品取引業の登録がいる。「海外で運用しているから日本の制度は関係ない」という説明は、ここで一度立ち止まりたいポイントだ。日本の人に日本で勧誘している以上、日本の制度の側から見られる。

金融庁は、いわゆるファンド形態での販売・勧誘等業務について(金融庁)のなかで、こう述べている。「金融商品取引業の登録を受けずにファンドの募集や運用をする行為は、金商法により禁止されており、これに違反した場合には刑事罰が課されることがあります」。そして「無登録業者からの勧誘は、詐欺的な商法であるおそれが高いと考えられますので、一般の皆様は、一切関わりにならないようにしてください」と続く。

つまり、勧めてきた相手が登録を受けているかどうかは、こちら側で確かめられる。金融庁は無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について(金融庁)として、警告書を出した業者の一覧も公表している。ただし、ここに「載っていないから安全」とは言えない。金融庁自身が「掲載されていない業者でも無登録営業の可能性がある」と注記している。名前が無いことは、白の証明にはならない。

「海外だから登録は不要」への一拍 運用の場所がどこであれ、日本に住む人へ日本で勧誘している時点で、登録の有無は確かめてよい。まず会社名や担当者名を、金融庁の登録業者の検索と、警告書一覧の両方に当ててみる。検索で出てこない・警告一覧に名前がある――どちらも、近づかないでおく理由になる。

「元本保証で毎月配当」を、割り算でほどく

この型のもう一つの軸が、「元本は保証する」「毎月、決まった配当が出る」という約束だ。数字で考えてみたい。仮に「毎月3%」と言われたとする。1か月で3%なら、複利で12か月回すと、1.03を12回かけることになる。元手はおよそ1.43倍。1年で4割を超えて増える計算だ。これを「元本保証」で約束するというのは、相当に重い約束になる。

そんな運用が安定して存在するなら、人を募らずとも、黙って自分の金で回しているはずだ。私はそう見ている。で、その配当は、誰の金から出ているのか。運用の利益から出ているのか。それとも、後から入ってきた人の出資金を、先に入った人への配当に回しているだけなのか。後者だとすれば、それは新しい入金が続いている間だけ配当が出る構造にすぎない。

金融庁も詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!(金融庁)のなかで、「必ず儲かります! 元本も保証します!」といった誘い文句を、典型的な詐欺的勧誘の例として挙げている。同じページは、入金・送金のあとに連絡が取れなくなる事例について「詐欺的商法の可能性が高い」と注意を促している。「元本保証」と「高い利回り」が同じ口から出てきたら、まず割り算で確かめたい。

きっかけはSNS、出口は「出金できない」

この型は、最近では対面ではなく、SNSやマッチングアプリ、著名人をかたる広告など、非対面のきっかけから始まることが多い。相手の顔も、運用の実体も見えないまま、画面の中で話が進む。

国民生活センターは、こうした相談の急増を数字で示している。SNSをきっかけとして著名人を名乗る等して勧誘される金融商品・サービスのトラブル急増(国民生活センター)によれば、年度別の相談件数は2021年度が52件、2022年度が170件、2023年度は1,629件。2年でおよそ9.6倍に増えている。年間の平均契約購入金額は、2023年度で687万円。小さくない額が、画面越しに動いている。

同センターは、副題で「いったん振込してしまうと、被害回復が困難です」と言い切っている。この型の出口は、たいてい同じだ。配当はしばらく届く。だが、まとまった額を出金しようとすると応じてもらえない。「税金がかかる」「手数料が必要だ」と、追加の入金を求められる。やがて連絡が取れなくなる。金融庁も無登録業者との取引は要注意!!(金融庁)で、出金の拒否や法外な手数料の請求、急に連絡が取れなくなるといったトラブルが多く寄せられていると説明している。

この型を見分ける、お金の流れの問い 看板(海外・ファンド・元本保証)ではなく、お金の流れに三つ問いを当てたい。①その配当は運用益から出ているのか、新規入金から出ているのか。②出金は、いつでも、満額、応じてもらえるのか。③追加の入金を求められる場面はないか。一つでも答えに詰まるなら、いったん近づかないでおく。

立ち止まるための、ゆるい行動ルール

気合いで見抜こうとすると疲れる。だから、いくつかを「いつものクセ」にしてしまうのがいい。一番効くのは、その場で決めないことだ。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにできれば、それだけで大半は防げる。そのうえで、

  • 「海外で運用」と言われたら、勧めてきた会社名を金融庁の登録業者の検索と警告書一覧に当てる
  • 「元本保証」と「高い利回り」が同じ口から出てきたら、まず割り算で利回りを確かめる
  • 出金が「いつでも・満額・すぐ」に応じてもらえるかを、お金を入れる前に聞く
  • 家族や友人など、利害のない誰かに、一度かならず話してみる

すでに入金してしまった方へ

もう振り込んでしまった、という方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。配当が届いていても、追加入金を求められたら、そこで止めてほしい。順序はこうなる。

  • ①税金・手数料などの名目でも、追加で払わない
  • ②やり取り・振込の記録を、消さずに残す
  • ③振り込んだ決済元(銀行・送金事業者など)に連絡する
  • ④公的な窓口に相談する

相談先は、こちらが正規の窓口だ。投資被害が疑われる場合は、金融庁の金融サービス利用者相談室(金融庁)(受付は平日10時00分〜17時00分)。消費生活全般の相談は、全国共通の消費者ホットライン「188(いやや)」。だまされたと思ったときは、警察相談専用電話「#9110」も使える(各種相談・情報提供等(警察庁))。私には個別の解決はできない。最終の判断は、これらの窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。

この記事のまとめ

  • 「海外で運用」「ファンド」「元本保証で毎月配当」は、利益の出どころから目をそらさせる看板になりやすい
  • 運用の場所がどこでも、日本で勧誘する以上、登録の有無は確かめられる。配当の出どころと出金の可否を、お金の流れで問う

対策は結局のところ、その場で決めない・割り算と登録で確かめる・第三者と正規窓口に当てる。この三つに尽きる。で、その利益の出どころは?――そこが説明されない話には、近づかないでおきたい。