第244号黒岩検閲済 2026年6月28日 発行(不定期刊/前号:6月28日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|カリスマトレーダー型

「顔出しNGの正体不明トレーダー」を入口にした投資勧誘の型を、お金の流れで調べた

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黒岩警戒度

「FX歴20年。顔は出していないが、稼いだ額は億単位」――そんな肩書きでブログやSNSに現れる、正体不明のカリスマトレーダーがいる。発信そのものは無料で、語り口も丁寧だ。だからこそ、ファンは増えていく。特定の人物は名指しせず、この“顔出しNGの達人を入口にする”型を、人物の真偽ではなく、お金がどこを通って動くのかという側から調べた。

「正体不明のカリスマ」が、なぜ入口として効くのか

顔が見えないことは、本来なら不安材料のはずだ。ところがこの型では、それが逆に働く。「顔を出せない事情があるほどの実力者」「身元を明かさないミステリアスな天才」という物語に変換され、検証できないことが神秘性になってしまう。

無料で有益そうな情報を配り続ければ、受け取った側には「これだけもらったのだから」という負い目に近い好意が育つ。やがて発信者は信頼の対象になり、その人の言うことなら、と財布のひもが緩む。ここまでは、まだ一円も動いていない。動かす舞台が整っただけだ。で、その先で、お金は何に対して支払われるのか。

SNS発の投資勧誘で、今これだけのお金が動いている

まず規模を見ておきたい。警察庁によると、SNS型投資・ロマンス詐欺は令和7年11月末時点で認知8,217件・被害額1,071.1億円(前年同期比+37.6%)と、前年から大きく増えている(警察庁・2025年)。年単位で千億円が動く領域になっているということだ。

入口の変化も数字に出ている。著名人を名乗る・つながりがあるなどとしてSNSで勧誘される金融商品トラブルの相談は、2021年度52件から2023年度1,629件へ急増したと国民生活センターは報告している(2024年)。匿名や著名人の名を借りた“入口”が、それだけ多く使われるようになったとも読める。

で、その利益の出どころは?

ここが本題だ。無料の発信だけでは、発信者に収入は入らない。にもかかわらず勧誘として続いているなら、お金が落ちる出口はどこかにある。よくある橋渡しは、だいたい次のような場所に置かれている。

  • 月額・年額で課金する有料サロンやオンラインコミュニティ
  • 「この人の手法が入っている」とされる専用アプリ・自動売買ツール
  • 数万〜数十万円の情報商材、個別コンサル、セミナー
  • 指定の口座・取引業者へ入金させ、そこから手数料が戻る導線

無料で配るほど、その先の有料の出口は太くなっている――そう考えて流れを追うと、見え方が変わってくる。発信の質ではなく、最終的にどこへお金を入れさせたいのかを先に確かめたい。

「無料」は親切ではなく、設計かもしれない 惜しみなく無料で配る姿勢そのものが、有料の出口へ進ませるための入口になっていることがある。受け取った情報の量と、相手の善意の大きさは、必ずしも一致しない。

匿名のまま「有料で売買を助言する」ことの問題

正体を明かさない発信者が、有料で個別の売買タイミングや銘柄を助言する。これは響きほど自由な行為ではない。金融庁は、「登録を受けずに金融商品取引業…を行うことは違法」と明記している(金融庁・2023年)。有償で投資助言を行う事業には登録がいる、という線が引かれているわけだ。

登録の有無は、お金を入れた後のトラブルにも直結する。金融庁は無登録業者について、出金の拒否や法外な手数料の請求、急に連絡が取れなくなるなどのトラブルが多く寄せられているとする(金融庁・2023年)。専用アプリに資金を移した途端に出金できなくなる、という流れは、ここにつながりやすい。

確かめ方は、ひとつだけ 相手が日本で登録を受けた事業者かどうかは、自分で確認できる。金融庁の登録業者一覧で名前が見当たらない――それ自体が、立ち止まるべき答えになる。

「億稼いだ」スクショと「必ず儲かる」を、どう疑うか

カリスマ型の説得力を支えているのは、たいてい二つだ。ひとつは利益のスクリーンショット、もうひとつは「この手法なら勝てる」という言い切りである。だが画像は、こちらからは裏が取れない。検証できない数字は、根拠としては弱いと考えていい。

言い切りのほうも要注意だ。金融庁は、SNS等を通じて「必ず儲かる」とうたう高利回りな投資話への注意を呼びかけている(金融庁・2026年更新)。「必ず」「絶対」といった断定は、信頼の証ではなく、むしろ距離を取る合図だ。消費者庁も「儲け話をすすめられたら、まずは疑いましょう」と注意喚起している(消費者庁・2024年)。なお、顔出しNGをうたいながら著名人の名や画像を借りる例もあり、国民生活センターは著名人の画像・動画が無断で使われていないか確認するよう助言している(2024年)。

  • 「顔出しNG」は実力の証ではなく、検証できない理由でもあると見る
  • 利益スクショは、自分で裏が取れないかぎり根拠にしない
  • 有料サロン・アプリ・口座――最終的にお金を入れる先を先に確認する
  • 相手が金融商品取引業の登録業者か、金融庁の一覧で照らす
  • 「必ず」「絶対」が出たら、その場で決めず一度持ち帰る

この記事のまとめ

  • 「正体不明のカリスマ」は、検証できないことが神秘性にすり替わる入口になりやすい
  • 無料発信の先には、有料サロン・専用アプリ・指定口座という“お金の出口”が置かれていることがある
  • 見るべきは人物の物語ではなく、登録の有無・入金先・断定表現の三点

稼いだ額より先に確かめるのは、その利益が「誰の・どんな登録のもとで」生まれているのか。出どころが説明できない話は、いったん持ち帰る。それで失うものは、何もない。