「投資はメンタルが大事」と教える無料発信が、有料サロンへ橋渡しする型を、お金の流れで調べた
「投資で勝つのは、メンタルが9割」「感情に流された人から退場していく」――こういう発信を、ブログやSNSでよく見かける。言っていること自体は、まっとうだ。私も20年、止める側から相場を見てきたが、冷静さが大事なのは本当だと思う。だからこそ、ここでひとつ立ち止まりたい。正論はなぜか、入口にちょうどいいのである。今号は、特定の発信者を名指しせず、この“正しいことを無料で教える→信頼が育つ→有料の場へ橋渡しされる”という流れを、お金の側から洗ってみた。
なぜ「メンタルが大事」という正論が、入口に使われるのか
怪しい話は、たいてい入口で反論できる。「月利10%」と言われれば、割り算をすれば変だと気づける。ところが「感情に流されるな」「規則正しい生活が判断を支える」と言われると、反論のしようがない。正しいからだ。
反論できない話を続けて聞かされると、人は少しずつ「この人は分かっている」と感じる。無料で、何度も、ためになる話を渡されれば、なおさらだ。つまり、正論は中身で売っているのではなく、信頼を積み立てるために置かれていることがある。入りの言葉が同じなら、出口も似てくる。私はそう見ている。
お金の流れで見ると、どこで課金が起きるのか
ここで一度、お金がどこから来てどこへ行くかを追ってみたい。無料の発信そのものでは、発信者にお金は入らない。では、その人の収入はどこから生まれるのか。多くの場合、答えは次の段階にある。月会費のオンラインサロン、十数万円から数十万円の講座、個別指導、有料の情報商材。無料で渡した正論は、ここへ橋を架けるための材料になっている、という構図だ。
誤解のないように言い添えておく。月会費を取ること自体は、悪ではない。価値のある情報に対価が発生するのは、当たり前のことだ。問題は中身ではなく、「正論で信頼を作る人」と「その信頼でお金を集める人」が同じだったとき、判断の利害が読者と一致しているかどうか、という一点にある。
「無料の良質な発信」自体は問題ではない。問題は次の段階
公的な相談データを見ても、つまずきが起きているのは無料の発信ではなく、その先の有料の段階だ。国民生活センターは、オンラインサロンを「稼ぐ手段」とうたう新たなもうけ話のトラブルや、情報商材をめぐる相談について注意を呼びかけている(国民生活センター)。消費者庁も、SNSなどを通じた投資や副業の「もうけ話」に注意するよう促している(消費者庁・令和6年)。
数字も出ている。SNSをきっかけに著名人の名前やつながりを使って勧誘される金融商品・サービスの相談は、2021年度の52件から、2022年度170件、2023年度には1,629件へと増えた(国民生活センター・2024年)。1年で約10倍だ。無料で築いた信頼が次の段階の入口になりやすい、ということは、相談件数の伸びにも表れている。
有料の投資指導には、登録という制度の線がある
もうひとつ、無料発信から有料の「投資の助言」へ進むときに、知っておきたい線がある。他人の求めに応じて投資の助言を仕事として行うには、金融商品取引業の登録が必要だ。金融庁は、登録を受けずに金融商品取引業を行うことは違法であると明示している(金融庁)。相手が海外にいても、日本に住む人を相手に行う場合は登録が必要になる、とも案内されている。
つまり、読者の側にも確かめる手立てがある。お金を払う前に、その相手が登録を受けているかどうかを金融庁のサイトで確認できる(金融庁)。逆に、無登録のまま活動しているとして警告を受けた業者の名称も公表されている。名前で照合できる、ということだ。
入口で確かめたいこと
気合いで見抜こうとすると疲れるので、私は「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思っている。無料で良い話をもらったときほど、次の一歩を急がないでほしい。確かめたいのは、次の4点だ。
- 無料の発信の「次」に、月会費・講座・個別指導など有料の場が用意されていないか
- 有料の場の料金・解約条件が、契約前に書面で示されているか
- 「投資の助言」を有料で行うなら、金融庁の登録業者かを支払い前に確認したか
- 「今だけ」「枠が残りわずか」と、考える時間を奪う言葉が混ざっていないか
この記事のまとめ
- 「メンタルが大事」という正論は、反論できないぶん、信頼を積むための入口に使われることがある
- お金の流れで見ると、収入は無料発信ではなく次の有料段階(サロン・講座・個別指導)で生まれやすい
- 確かめるのは中身ではなく、有料に進むときの料金・解約条件・即決の有無、そして登録の有無
無料の話が良いことと、有料の場が安全なことは、別だ。立ち止まって、次の段階の条件を先に確かめてほしい。一人で迷うときは、消費者ホットライン188が、最寄りの消費生活センターへつないでくれる。